日本大百科全書(ニッポニカ) 「しみ抜き」の意味・わかりやすい解説
しみ抜き
しみぬき
衣料などに部分的に付着した汚れ(しみ)を取り去る操作。洗濯できない衣料や、全体を洗濯する必要のないとき、また洗濯では落ちなかった汚れを取り除くときに、しみ抜きが必要になる。しみ抜きは家庭で行うことができるが、高級衣料や和服、取扱いのむずかしいもの(収縮しやすい素材や色落ちの心配のあるものなど)は、クリーニング店などの専門家に任せるほうがよい。
しみはその性質から、水に溶けやすい水溶性、溶剤(ベンジンやアルコールなど)に溶けやすい油性、どちらにも溶けない不溶性の三つに大別されるが、これらの性質にあわせて処理法を選ぶとよい。コーヒーや果汁などの水溶性のしみは水によって、またクリームやバターなどの油性のしみは溶剤によって、それぞれ汚れを溶かし出し、除去する。泥や墨汁などのような不溶性の場合は、もむなどの物理的な力を加えることにより取り除く。いずれの場合も洗剤(台所用中性洗剤など)を用いると、その乳化力や可溶化力、または分散力などによって汚れが取り出しやすくなる。これらの処理で除去できないときには、さらに漂白剤や酵素(酵素洗剤)などを用いて化学的に漂白したり分解したりする。
しみは最初、水溶性や油溶性であっても、時間の経過や熱、空気、日光などの影響で変質して不溶性となり、取り除くのがだんだんむずかしくなるので、しみがついたらできるだけ早く処置をする。クリーニング店などの専門家に任せる場合もなるべく早く依頼することがたいせつである。しみ抜きに溶剤や漂白剤を用いる場合、衣料によっては溶解したり変色、脱色をおこすことがあるので、事前に衣料や使用する処理剤の表示をよく読み、端裂(はぎれ)や目だたない部分で色落ちなどを試すとよい。
家庭での基本的なしみ抜きは、次のような手順で行う。
(1)しみの性質や衣料にあわせて処理剤を選び、必要な用具(当て布、ブラシ、洗面器など)を準備する。
(2)しみ抜きは衣類などへの影響の少ない温和な方法から順に行う。まずタオルなどの当て布に衣料などのしみのついた側を当てる。処理液を含ませた布や歯ブラシでしみの裏側からたたき、当て布に汚れを移行させる。その際、しみを広げないように周囲から中心に向かってたたき出し、当て布の場所を変えながら、色が出なくなるまで十分に繰り返す。場合によってはもみ洗いをしたり、処理液に浸す。
(3)洗剤や漂白剤を使用した場合には、さらに水で(2)と同様の操作を行い、よくすすぐ。
(4)ぬれた部分と乾いた部分の境目に輪じみが生じたときには、最後に使った水や溶剤で霧を吹くか、これらの溶液を含ませた布で周縁部をたたいて境目をぼかす。乾いた布で液をたたき取ってから乾かす。
(5)アイロン仕上げをする場合は衣料が乾いてから行う。
[重弘文子]