改訂新版 世界大百科事典 「ショウジョウエビ」の意味・わかりやすい解説
ショウジョウエビ (猩々蝦)
Glyphus marsupialis
甲殻綱オキエビ科に属する深海産の体長20cmに達する大型エビ。一様に濃い赤色のためこの名がある。甲は硬くない。頭胸甲の側面にはやや不規則な稜があるほかは特別のとげはない。額角はごく短くてほぼ水平に突き出し,その後方は頭胸甲の正中稜として続き,ごく小さなとげが5~8本不規則に並んでいる。歯の数や間隔は必ずしも一定していない。第1,2胸脚が大きくてはさみをもち,第3胸脚が糸状で長く,第4,5胸脚が著しく小さいことはオキエビ科の特徴をよく表している。1918年春,当時皇太子殿下であった昭和天皇が沼津御用邸に滞在中,暴風雨の翌朝海岸で1尾採集したのが初めての標本で,その後やはり沼津付近から合計5個体ほど得られているだけの珍しい種である。22年に新種としてSympasiphaea imperialisの学名が与えられたが,最近の研究によると,属の模式種であるインド洋産のS.annectensと同種であり,それはまた大西洋産のG.marsupialisと同種である。大型種ではあるが肉量が少ない。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報