改訂新版 世界大百科事典 「ショウジンガニ」の意味・わかりやすい解説
ショウジンガニ (精進蟹)
Plagusia dentipes
甲殻綱イワガニ科のカニで,外洋性の岩礁にすみ,水中の岩の表面をすばやく歩き回る。甲幅4.5cm,甲長4cmくらいの丸みを帯びた四角形で,短毛で覆われている。額は狭くて突き出し,中央の溝がやや深い。第1触角は額の両側に縦にたたまれ,背面から見ることができる。甲の前側縁には四つの突起が鋸歯状に並び,歩脚の長節の前縁もやはり鋸歯状である。赤褐色であるが,はさみ脚を覆う顆粒(かりゆう)は濃赤色。メガロパ幼生は初夏に岩礁で見られるが,甲長1cmほどあり,他のカニ類のメガロパに比較すると断然大きい。岩手県沿岸から九州,台湾までごくふつうであるが,近年では,幼生か稚ガニが船のバラストタンクで運ばれたらしく,カリフォルニア沿岸で増えているという。食用にする地方もある。甲面が平らないぼ状突起で覆われたイボショウジンガニP.tuberculataは波の荒い岩礁にすむが,流木などについて漂流していることもある。
執筆者:武田 正倫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報