日本大百科全書(ニッポニカ) 「ショールズ」の意味・わかりやすい解説
ショールズ
しょーるず
Myron Samuel Scholes
(1941― )
カナダ生まれの金融経済学者。オンタリオ州ティミンズ生まれ。マクマスター大学で学び、1969年にアメリカのシカゴ大学で博士号取得。マサチューセッツ工科大学、シカゴ大学教授などを経て、スタンフォード大学教授。「株式オプションの価値を示す画期的な公式を発見するとともに、デリバティブ(金融派生商品)の価格決定方法を考案し、金融市場の飛躍的な発展に貢献した」ことで、1997年にR・C・マートンとともにノーベル経済学賞を受賞した。
1973年に、フィッシャー・ブラックFischer Black(1938―95)と共同でオプション価格を導き出せる簡便な「ブラック‐ショールズ方程式」を発表する。この方程式を使って実際の売買が簡単にできたため、デリバティブ市場が急成長する契機をつくった。また、さまざまなデリバティブを開発し、リスク・コントロールにおいて社会の効率性を促進させ、社会に貢献した。ただノーベル賞受賞の翌年の1998年に、ショールズとマートンが共同経営者として名を連ねていた大手ヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)が破綻(はたん)し金融システム不安を引き起こしかねない事態に陥ったため、その後、ノーベル経済学賞選考のあり方への批判や議論を巻き起こすことになった。
[金子邦彦]