シリウスイタリクス(英語表記)Tiberius Catius Asconius Silius Italicus

改訂新版 世界大百科事典 「シリウスイタリクス」の意味・わかりやすい解説

シリウス・イタリクス
Tiberius Catius Asconius Silius Italicus
生没年:30ころ-101ころ

ローマ叙事詩人。68年にはコンスル執政官)を務め,77年には小アジアの属州総督になったが,晩年になって詩作を始め,1万2200行に及ぶ大叙事詩《ポエニ戦争》を書きのこした。101年ころ不治の病にかかってみずから餓死したと伝えられている。《ポエニ戦争》は,ローマとカルタゴの間に戦われた第2次ポエニ戦争を題材としており,エンニウスウェルギリウスと続いたローマ叙事詩の伝統の中に生まれた作品である。作品の資料はリウィウスの歴史記述に,詩的技巧模範はウェルギリウスに求められている。しかし,ウェルギリウスや彼より少し前に死んだルカヌスと比べた場合,シリウス詩人として劣っていたことは疑うべくもなく,ラテン詩が帝政期に入ってしだいに衰退していったことを示している。《ポエニ戦争》は一時散逸し,ルネサンスになってポッジョ・ブラッチョリーニによって再発見された。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シリウスイタリクス」の意味・わかりやすい解説

シリウス・イタリクス
Silius Italicus, Tiberius Catius Asconius

[生]25/26. パタウィウム(現パドバ)?
[没]101
ローマの叙事詩人。ネロ帝のもとで,68年に執政官。その後アシア総督になり,引退後,文芸愛好家として余生をおくった。代表作『ポエニ戦役』 Punica (17巻) は,ハンニバル誓言からザマの役におけるスキピオの勝利にいたる第2次ポエニ戦争を歌う叙事詩で,材料はリウィウスからとり,形式はウェルギリウスとルカヌスに学んでいる。ローマの叙事詩のなかで最も長い。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シリウスイタリクス」の意味・わかりやすい解説

シリウス・イタリクス
しりうすいたりくす
Silius Italicus
(26ころ―101)

古代ローマの詩人。ローマで政治家として出発し、68年にはネロ皇帝の最後の執政官(コンスル)となり、またアジアにおける行政でも名をあげたが、その後は引退し、芸術を愛好して余裕のある生活を送った。最後は不治の病にかかり、食を断って自ら餓死したという。カルタゴとローマの対決を扱った一万数千行に及ぶ叙事詩『ポエニ戦詩』(全17巻)を書いている。

[引地正俊]

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世界大百科事典(旧版)内のシリウスイタリクスの言及

【ラテン文学】より

…またそのほかの散文作家には,小説《サテュリコン》の作者ペトロニウス,百科全書《博物誌》の著者の大プリニウス,《書簡集》を残した雄弁家の小プリニウス,農学書を残したコルメラ,2世紀に入って,《皇帝伝》と《名士伝》を著した伝記作家スエトニウス,哲学者で小説《黄金のろば(転身物語)》の作者アプレイウス,《アッティカ夜話》の著者ゲリウスなどがいる。 詩の分野ではセネカの悲劇のほかに,叙事詩ではルカヌスの《内乱(ファルサリア)》,シリウス・イタリクスの《プニカ》,ウァレリウス・フラックスの《アルゴナウティカ》,スタティウスの《テバイス》と《アキレイス》など,叙事詩以外ではマニリウスの教訓詩《天文譜》,ファエドルスの《寓話》,カルプルニウスCalpurniusの《牧歌》,マルティアリスの《エピグランマ》,それにペルシウスとユウェナリスそれぞれの《風刺詩》などがみられる。2世紀初頭に創作したユウェナリスのほかはすべて1世紀の詩人たちである。…

※「シリウスイタリクス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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