改訂新版 世界大百科事典 「シリウスイタリクス」の意味・わかりやすい解説
シリウス・イタリクス
Tiberius Catius Asconius Silius Italicus
生没年:30ころ-101ころ
ローマの叙事詩人。68年にはコンスル(執政官)を務め,77年には小アジアの属州総督になったが,晩年になって詩作を始め,1万2200行に及ぶ大叙事詩《ポエニ戦争》を書きのこした。101年ころ不治の病にかかってみずから餓死したと伝えられている。《ポエニ戦争》は,ローマとカルタゴの間に戦われた第2次ポエニ戦争を題材としており,エンニウス,ウェルギリウスと続いたローマ叙事詩の伝統の中に生まれた作品である。作品の資料はリウィウスの歴史記述に,詩的技巧の模範はウェルギリウスに求められている。しかし,ウェルギリウスや彼より少し前に死んだルカヌスと比べた場合,シリウスが詩人として劣っていたことは疑うべくもなく,ラテン詩が帝政期に入ってしだいに衰退していったことを示している。《ポエニ戦争》は一時散逸し,ルネサンスになってポッジョ・ブラッチョリーニによって再発見された。
執筆者:平田 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報