古代ローマの政治家、将軍。スキピオ家はローマ最高の貴族の一つであるコルネリウス氏に属し、多くの優れた政治家を出した。大スキピオは第二次ポエニ戦争(前218~前201)勃発(ぼっぱつ)とともにイタリアで転戦し、カンネーにおけるローマ軍の大敗北も体験した。父と伯父が敵の根拠地スペインで戦い、紀元前212年ごろ両者とも戦死すると、その後を受けて20代前半の若さでコンスル(統領)相当官としてスペインに送られ、前209年にはカルタゴ・ノバ(現カルタヘナ)を攻略し、前206年までにカルタゴ勢力をスペインから駆逐した。その間スペイン原住民の指導者層を心服させ、またアフリカにも渡ってヌミディアのシュファックスSyphax、マシニッサMasinissa両王を味方にした。前205年のコンスルに選出されると、任地としてシチリアを与えられたが、イタリアの劫掠(ごうりゃく)を続けるハンニバルをよそにカルタゴ本土の直接攻撃を主張し、元老院首席ファビウスをはじめとする元老院内部の反対を押してアフリカに兵を進めた。本国に呼び戻されたハンニバルを前202年にザマの戦いで破り、ローマの勝利のうちに戦争を終結させて「アフリカヌス」の称を得た。
第二次マケドニア戦争(前200~前197)が始まると、前199年に元老院首席に指名され、以後ヘレニズム世界への進出を開始したローマ国家の最高指導者として活躍した。とくにローマとシリア王アンティオコス3世との戦い(前192~前188)に際しては、前190年にコンスルで軍総司令官になった弟ルキウス・スキピオLucius Scipioの副官として小アジアに渡り、ローマの勝利に貢献した。しかし、このときアンティオコス3世と彼ら兄弟との交渉経過がローマ人の疑惑を招き、彼らは大カトーを中心とする政敵の攻撃にさらされるに至った。大スキピオは失意のうちに政界から引退してローマを去り、カンパニアで病没した。
[吉村忠典]
『吉村忠典著『支配の天才ローマ人』(1981・三省堂)』
古代ローマの将軍、政治家。第三次マケドニア戦争の勝利者アエミリウス・パウルスAemilius Paullusの次男で、大スキピオの長男の養子になった。紀元前168年に実父の指揮下にピドナの戦いに参加、前151年にはスペインの戦線で武勲をたて、翌年アフリカでヌミディアとカルタゴの紛争を調停した。第三次ポエニ戦争が起こると、前149年から高級将校として従軍、前147年には法的にまだ資格を欠いたが破格の措置でコンスル(統領)になり、ローマ軍総司令官に任ぜられた。前146年にカルタゴを陥落させると、元老院の命でカルタゴ市を破壊し、その土地を呪(のろ)う宗教的儀式を行い、敵の生存者を奴隷として売り、この地方を属州アフリカとして編成し、「アフリカヌス」の称を得た。前142~前141年ケンソル(監察官)となった。前140~前139年に元老院特使としてエジプト、ロードス、ペルガモン、シリアなどに旅行をした。前134年には、再選を禁ずる法が存在したにもかかわらずコンスルに再任。イタリアの兵員不足のため彼をパトロンと仰ぐ諸外国の提供した軍を率いてスペインに向かい、翌年同地原住民の拠点ヌマンティアNumantiaを攻略し、破壊した。義弟グラックスの改革に際してはこれに反対したが、前129年に謎(なぞ)の死を遂げ、暗殺の疑いがもたれた。彼はローマの伝統文化と並んでギリシア文化を愛し、ポリビオス、パナイティオスらギリシアの文化人と親しんだ。
[吉村忠典]
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前235~前183
古代ローマの将軍,政治家。名門の出。グラックス兄弟の祖父。第2次ポエニ戦争ではヒスパニアのカルタゴ軍を破ったのち,前202年ザマの戦いでハンニバルを撃破して戦争を終結させた。前190年小アジアでアンティオコス3世を討ったが,帰国後保守派のカトー(大)らと争い告訴され,失意のうちに没した。
前185~前129
古代ローマの将軍,政治家。スキピオ(大)の長子の養子。前146年カルタゴを破壊して第3次ポエニ戦争をローマの勝利に終わらせた。前133年ヒスパニアのヌマンティアを攻略してイベリア半島支配を確立した。グラックス兄弟の改革に反対し,前129年謎の死をとげた。その周辺に文化人を集めてギリシア文化,思想の普及に尽くした。
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