日本大百科全書(ニッポニカ) 「シルバ」の意味・わかりやすい解説
シルバ
しるば
José Asunción Silva
(1865―1896)
コロンビアの詩人。富裕な家庭に生まれ、10代の終わりから20代の初めをおもにフランスで過ごすが、父親の死、難船による詩稿の散逸、破産、妹の死など相次ぐ不運にみまわれ、生来の厭世(えんせい)的傾向をいっそう深めて、ピストル自殺を遂げた。詩作は、スペインの詩人G・ベッケルの影響下にあった第1期、ヨーロッパでフランス象徴派やショーペンハウアーの思想に触れ、それらを自国に持ち帰った第2期、および絶望が深まる第3期からなる。愛と死というロマン派的テーマを好み、妹の死に触発されて書いたという『第三夜曲』は、迫り来る死の予感を音楽的構造をもつすすり泣くようなリズムで歌った近代主義の傑作である。死後出版の散文に自伝的小説『食後に』がある。
[野谷文昭]
『荒井正道訳「シルバ」(『世界名詩集大成14 南欧・南米』所収・1959・平凡社)』