ジキル博士とハイド氏(読み)じきるはかせとはいどし(英語表記)The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ジキル博士とハイド氏」の意味・わかりやすい解説

ジキル博士とハイド氏
じきるはかせとはいどし
The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde

イギリス作家、R・L・スティーブンソン中編小説。1886年作。高名なジキル博士は、飲むと一片道徳心ももたぬ凶悪な人間(ハイド氏)に変身する薬を発明する。そもそも善悪二つの性質が1人の人間に共存することが不幸のもとと考える博士は、その片方だけを取り出し、これに肉体を与えたのである。彼は、ハイド氏になっている間は、道徳意識からの完全な解放を味わう。だが回を重ねるうちに、薬を使わないでもハイド氏のほうの姿を常とするようになり、悲惨な最期を遂げる。グロテスクな物語のため、当時の社会に衝撃を与え、あらゆる階層から糾弾を浴びたが、人間の二重性の問題をついた点で、きわめてユニークな作品といえる。

[高見幸郎]

『岩田良吉訳『ジーキル博士とハイド氏』(岩波文庫)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ジキル博士とハイド氏」の意味・わかりやすい解説

ジキル博士とハイド氏
ジキルはかせとハイドし
The Strange Case of Dr. Jekyll and Mr. Hyde

イギリスの小説家 R.L.スチーブンソンの小説。 1886年刊。二重人格を扱った魅力的な怪奇譚として広く読まれてきた。ジキル博士は自分のなかにある善悪二者を別個の人格に分離するという着想に魅せられて,そのための薬剤の発明に成功する。それを服用して彼は随時,外貌醜悪で品性下劣なハイド氏に姿を変えて陋劣な欲望を満足させてきたが,次第に悪に対する抑制がきかなくなり,ついにハイドは殺人を犯すにいたる。さらにハイドからジキルに戻る薬もききめを失い,また薬を飲まずとも自然にハイドに変貌する事態がたびたび起るようになる。やがてハイドの犯罪が暴露されて司直の手が迫り,逮捕寸前ジキル博士はみずから命を絶つ。

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