改訂新版 世界大百科事典 「ジューエット」の意味・わかりやすい解説
ジューエット
Sarah Orne Jewett
生没年:1849-1909
アメリカの女流小説家。メーン州サウス・バーウィックに田舎医師の娘として生まれ,その地方の自然や風俗に深くなじんだ。18歳の年から作品を発表し始め,1873年にはメーンを描く物語が初めて《アトランティック・マンスリー》誌に掲載された。77年に最初の著書《ディープヘーブン》を出版,かつては港として栄えながら今はさびれている町の捨てがたい趣を外来者の目を通して綴り,地方色文学に独自の世界を呈示してみせた。長編《とんがり樅(もみ)の国》(1896)は彼女の作家としての力量が最大限に発揮された代表作だが,ここでも古き良きニューイングランドが哀惜の思いに裏打ちされながら,抑制のきいた筆で書きとめられている。ほかにも作品は多いが,とくに《白鷺》(1886)や《一輪だけのバラ》(1894)などの短編は有名。ウィラ・キャザーに与えた影響も忘れてはならない。1902年事故で負傷してからは創作の筆を折った。
執筆者:酒本 雅之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報