1936年12月5日に成立したソ連邦の憲法。スターリンの直接指導のもとに制定されたとして,当時このように呼ばれたが,スターリン批判後は,ソ連でも〈36年憲法〉と呼ばれている。内容的にも,当時のスターリンの理論と必ずしも一致しない規定があって,この呼称には強い異論がある。
この憲法は,1930年代初頭に,ソ連において社会主義が基本的に勝利し,階級諸勢力の相互関係が変化したとの理解のうえに,過渡期の憲法とされていた1924年憲法の改正として提起され,制定されたものである。この憲法では,ソ連は,地主と資本家の権力の打倒,プロレタリアート独裁の獲得の結果,成長し強固となった勤労者代議員ソビエトをその政治的基礎とし,社会主義的経済制度および生産手段・生産用具に対する社会主義的所有を経済的基礎とする,労働者と農民の社会主義国家であるとされた。また,すべての権力は,勤労者代議員ソビエトによって代表される都市と農村の勤労者に属する,と規定され,それまでの多段階,間接,不平等,公開投票という選挙制度を,普通,直接,平等,秘密の選挙制度に改めた。これらは,搾取階級の最終的な絶滅,労働者階級と農民の利益の基本的一致を前提としたものであった。ソ連邦最高ソビエトが,ひきつづき国家権力の最高機関とされたが,立法と執行の結合の原則は改められ,それぞれの機能が分離され,同時に裁判官の独立もうたわれた。労働者と農民の権利という把握から,市民の基本的権利・義務の規定に変わった。こうした憲法規定の諸特徴は,大枠としては,ブレジネフ期の1977年に成立したソ連憲法にもひきつがれた。
執筆者:竹森 正孝
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1936年に制定されたソ連憲法。ロシア革命直後18年につくられたロシア社会主義連邦ソヴィエト共和国憲法は,「搾取者には権力機関のいかなる地位をも与えない」と規定し,資本家,地主,聖職者などの選挙権剥奪を定めていた。それに対して,社会主義社会が成立したとされる時期のこの憲法は,労働者,コルホーズ農民,勤労インテリゲンツィアよりなるソ連市民のすべてに平等な諸権利を認めている。各級の勤労者代表ソヴィエトよりなる国家機構,国営企業とコルホーズよりなる社会主義経済機構,労働権と民族の平等,自治権などが定められている。
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