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社会主義国家 しゃかいしゅぎこっかsocialist state

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

社会主義国家
しゃかいしゅぎこっか
socialist state

マルクス=レーニン主義における政治上の概念で,革命を通じて権力を獲得したプロレタリアートが,社会主義経済の建設と社会主義社会の実現にむけて打立てるプロレタリア独裁の国家のこと。古典的マルクス主義によれば,社会主義の指標として「国家と階級の死滅」があげられており,それへいたる過渡期にプロレタリア独裁国家の必要性が説かれる。したがって,その意味からすれば,社会主義国家といわれているのは,理論的にはプロレタリア独裁国家のことにほかならず,社会主義国家ということが,形容矛盾であるといわねばならない。しかしながら,スターリン以後のマルクスレーニン主義に従えば,社会主義においても国家は残り,階級闘争も残存するとされ,「一国社会主義建設」のもとに社会主義国家は理論づけられている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

社会主義国家
しゃかいしゅぎこっか
социалистическое государство sotsialisticheskoe gosudarstvo ロシア語
socialist state英語
sozialistisch Staatドイツ語
tat socialisteフランス語

社会主義革命が達成されたあとの国家をいう。マルクス主義の古典によると、革命後の労働者階級は社会主義的な改革を実行するために自分たちの国家を必要とする。国家は社会主義が実現されたあとも、社会主義的な諸関係を規制するために必要だが、共産主義への移行とともに国家は消滅するだろう。資本主義から社会主義への移行期の国家は、住民の大多数を占める勤労者の民主的な組織であり、抑圧の対象はごく少数の有産者に限られているし(プロレタリアート独裁の国家)、社会主義から共産主義への移行期の国家は全人民の組織(全人民国家)であるから、軍隊・警察という国家の暴力装置は非常に簡単なもので足りる。社会主義国家では議会が自分で政府の仕事をし(立法と執行の統一)、行政に広範な住民が参加し、公務員は特権をもたないから官僚主義は消滅する。――ほぼこのように想定されていた。しかし現実の社会主義国家は古典の記すことと違っており、とくに官僚主義に悩まされてきた。
 社会主義諸国では国際環境が厳しく、国内的にも困難な状況があったので、極端に中央集権的で強力な国家の組織がつくられてきた。そのなかでもプロレタリアート独裁は共産主義への移行が終わるまで続くとか、階級敵はいつまでも残るから国家の暴力装置の強化が必要であるという、民主主義抜きの国家強化論がスターリン、毛沢東(もうたくとう)などにより唱えられた。
 しかし社会主義諸国に一般的な理論は、このような主張は誤りであり、社会主義国家の発展は民主主義の発展を伴い、国家の強化は、国家の業務への勤労者、その集団と各種団体の参加の拡大により得られるのであり、社会主義の政治では国家とともに個人、集団、非国家的な組織も積極的な役割をもつとされた。
 社会主義諸国では、中央・地方の議会は原則として直接選挙により選ばれた議員からなるが、議員のなかでの現場の経営幹部と労働者の比重が高い。国家権力の最高機関は中央議会(国会)であり、その幹部会(国家評議会)が議会の閉会中に政府を日常的に監督する。政府は議会により組織され、議会に対して責任を負い、議会を解散する権利をもたず(三権分立の否定)、政府の下に各種の専門行政機関である省庁が設置されている。地方レベルでは各級議会が権力機関であり、議員のなかから選出の者で地方の執行機関がつくられ、その下に行政各分野の地方的な機関が設置される。このような機構では、たてまえとしては行政機関の地位が低く、官僚主義の基盤はないが、実際には中央の省庁を頂点とする大きな管理機構がつくられ、行政、管理を職業とする社会階層が存在して、その官僚主義が問題になる。対策としての議会と世論による監督の強化、省庁の審議機関への労働組合などの代表の参加、地方行政への住民の参加の拡大は、十分な成果をあげない。このような状況のもとで、かつてレーニンが革命後の著作で検討した管理の問題が、国家論の焦点になった。
 社会主義には、大企業の本社、業界団体、経営者団体という管理の私的な中枢機構が存在しないから、国民経済を計画的に管理し、組織する任務が中央の国家機関に課せられている。計画化と管理を中央に集中させる従来のシステムは国民経済の発展を促進してきたが、年とともに政府機関の数が増え、その機構が大きくなったため管理の効率が逆に下がってきた。そこで社会主義諸国では、1960年代以来、国家による管理のシステムの改革が日程に上り、中央の政府機関の仕事を長期的な計画の作成、重点の選定、経済各部門間の調整など特定の重要事項に絞り、企業の自主性を大幅に拡大し、住民自治の機関である地方権力機関の管理での権限を強化する方向での改革が検討され、一部の国で実施された。このような管理の再編により中央の機構は縮小するが、むしろその機能を効率的に行えるようになり、管理の仕事の大半は、住民の参加と世論による監督が容易な地方のレベルで行われることになった。
 社会主義諸国では、社会主義には階級対立がないので、国家は全人民を代表する善であり、個人との間に対抗関係をもたないという考えが強かったが、実際には国家による個人の利益と権利の侵害が存在する。そこで、社会主義でも国家と個人の間に矛盾があるから、法により個人の権利と利益を保護しなければならないという理論が登場し、支配的になった。
 1980年代に社会主義諸国では、民主主義の発展による国家の組織と活動の改善が共通の課題になり、共産主義への移行に伴う国家の死滅は、遠い将来の問題とされ、関心の外に置かれた。そして89年の東欧の民主化、91年のソ連崩壊で大半の社会主義国は社会主義を放棄するに至った。[稲子恒夫]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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