ストイシズム(読み)すといしずむ(英語表記)stoicism

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ストイシズム」の意味・わかりやすい解説

ストイシズム
すといしずむ
stoicism

(1)古代ギリシアのストア哲学のこと。(2)ストア学派の影響によって生まれた一つの精神的態度。ことに実践道徳において、喜悦悲哀の感情を圧伏し、平静に無関心な態度で運命を甘受する人世観をいう。「ストイック」ともいう。ストア学派の古い人々の著作は早くから散逸したが、セネカエピクテトスマルクス・アウレリウスの著作は広く愛読され、後代への影響は大きかった。古代末期中世においては、ストア学派のいろいろの学説、ことにその内的自由の倫理説はキリスト教倫理の形成、修道院生活の理想に影響を及ぼした。

 16、7世紀はまたストア説の再興期であって、近代の思想文芸にも広い反響を生んでいる。シェークスピアの『じゃじゃ馬馴(な)らし』の一節、「只(ただ)、ねえ、旦那(だんな)さま、その、美徳とか、道徳の修行とかいうことあ結構とは存じますが、どうか、ま、ストイックだの、丸太棒(ストツク)だのには成りたくないものでございます」(第一幕、第一場、31行。坪内逍遙(つぼうちしょうよう)訳)はその一端を示すもので、ストア学派の無感情を皮肉ったものである。

[加藤信朗]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

マイナ保険証

マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようにしたもの。マイナポータルなどで利用登録が必要。令和3年(2021)10月から本格運用開始。マイナンバー保険証。マイナンバーカード健康保険証。...

マイナ保険証の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android