日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ストロンチウム水酸燐灰石
すとろんちうむすいさんりんかいせき
apatite-(SrOH)
燐灰石総群(燐灰石スーパーグループapatite supergroup)の一つ。ただし、正式な記載がないまま現在に至っている(2017)。ストロナデルファイトstronadelphite(化学式Sr5(PO4)3F)のOH置換体、水酸燐灰石のストロンチウム(Sr)置換体に相当する。
累帯構造をなす超塩基性岩中に含まれるアルカリペグマタイト脈の一構成成分をなす。日本では、新潟県糸魚川(いといがわ)市橋立の金山谷(かなやまたに)で超塩基性岩中に発達する曹長岩中に微細結晶からなるほとんど単鉱物の塊状集合として産し、端成分に非常に近い組成をもつものとされている。なお岩手県九戸(くのへ)郡野田(のだ)村野田玉川鉱山(閉山)のマンガン鉱床から産したフッ素燐灰石のなかにSrOに富むものがあるが、モル比にしてCa>Srであるので、含Srフッ素燐灰石として取り扱われている。共存鉱物は曹長石、苦土アルベゾン閃(せん)石あるいは苦土リーベック閃石など。同定は、日本のものは、比重の比較的大きい、ほとんど単鉱物の細粒塊状物質であるので、肉眼では同定の手掛りがない。化学組成および水酸燐灰石との関係から命名された。
[加藤 昭 2017年8月21日]