水酸燐灰石(読み)すいさんりんかいせき(英語表記)hydroxyapatite

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

水酸燐灰石
すいさんりんかいせき
hydroxyapatite

燐灰石族鉱物の一員。もっとも普通に産するフッ素燐灰石の水酸置換体に相当するが、これとは産状をやや異にする。火成岩起源のものは、花崗(かこう)岩質ペグマタイト、とくにいわゆるリン酸塩ペグマタイトなどで、既存のリン酸塩鉱物を交代して産する。堆積(たいせき)岩として、いわゆる燐鉱石を形成するものは、リン酸[PO4]の一部が炭酸[CO3OH]あるいは[CO3]によって置換された変種炭酸水酸燐灰石carbonate hydroxyapatiteであることが多い。これは沈殿に際し、空気中の炭酸ガスを吸収する。洞窟(どうくつ)堆積物や化石骨を置き換えて産することもある。また海底堆積物あるいはその固化産物の主成分をなす。岩石中では滑石片岩中や超塩基性岩中に産する。
 自形はフッ素燐灰石と同様、六角柱状、あるいは板状をなし、また微細粒からなる鍾乳(しょうにゅう)石、団塊、皮膜状集合などを形成するほか、微細な脈を構成することもある。一部の熱水鉱脈鉱床の脈石鉱物をなすものの中に産する「燐灰石」がこれに該当する。動物の歯の主成分は、結晶度の低い水酸燐灰石からなっており、CaO-P2O5-H2O系の合成実験では、100℃以下で形成される。これにFが加えられると、結晶度は著しく上昇し、酸に対する耐性が上昇する。
 日本では茨城県かすみがうら市雪入(ゆきいり)のリン酸塩ペグマタイト中に白色粉末状をなして産する。また栃木県日光市足尾(あしお)鉱山(閉山)の熱水鉱脈鉱床の脈石鉱物として産する自形結晶の一部でOH(ヒドロキシ基)>F(フッ素),Cl(塩素)のものが知られているが、累帯構造をなすものの一部に限られている。沖縄県島尻(しまじり)郡北大東(きただいとう)村沖大東島に産する堆積物中の燐鉱石の主成分は結晶度の低い炭酸水酸燐灰石である。共存鉱物は石英、斜長石、微斜長石、白雲母、方解石、フッ素燐灰石、滑石、透輝石、蛇紋石、ブラシュ石などである。
 2010年に新鉱物鉱物名委員会により、水酸燐灰石と同構造の鉱物(ケイ酸塩を含む)が燐灰石総群(燐灰石スーパーグループapatite supergroup)という形で一括された。[加藤 昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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