改訂新版 世界大百科事典 「スナヅル」の意味・わかりやすい解説
スナヅル
Cassytha filiformis L.
草質の茎をもったクスノキ科の寄生性つる植物で,世界の熱帯から亜熱帯に広く分布する。とくに海岸に多い。茎は黄緑色,黄褐色または褐色,径1~2mmのひも状で,よく分枝する。小さい吸器を出して木や草に寄生し,もつれたひものように寄主をおおう。吸器を通じて多くの栄養を寄主から得るが,葉緑体をもち,光合成も行う。葉は小さく退化した鱗片状で,茎に疎に互生し,一見,無葉にみえる。花序は長さ2~5cmの穂状で,鱗片葉の葉腋(ようえき)に生じ,数個~十数個の淡黄色の小花をつけ,花序の下方の花から順に開く。両性花で,花被片は6枚,2輪に並び,おしべは9本で3輪に並ぶ。果実は径約7mmの球形で,肉質化した宿存性の花被の筒部で包まれる。日本では九州佐多岬以南,琉球,小笠原の海岸に生える。
スナヅル属Cassythaは熱帯を中心に約20種があり,オーストラリアに多い。この属は生活形態が他のクスノキ科植物(すべて樹木)と著しく異なるところから,スナヅル科Cassythaceaeとして独立させることもあるが,花の構造はクスノキ科の特徴を示しており,今日ではふつう同科のスナヅル亜科Cassythoideaeとして位置づけられる。
執筆者:緒方 健
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報