ヒガンバナ科スノードロップ属の球根植物。15種ほどあるが,地中海東部地方に多い。属の学名は,その花色からギリシア語のgala(乳の意)とanthos(花の意)を組み合わせてつけられた。花壇,落葉樹の下の植込み,鉢植え,ロックガーデンなどにも利用される。春咲球根植物のなかではとくに早咲きで,植物の周囲から雪がとける時期に咲き,春告草(はるつげぐさ)として愛されている。栽植されるものにはオオユキノハナG.elwesii Hook.(英名giant snowdrop,トルコ原産,白花で花弁の内側に緑斑,草丈約20cm,開花期2月)やユキノハナG.nivalis L.(英名(common)snowdrop,南東ヨーロッパの原産,やや晩生,多くの変種がある)などがある。植込期は9月下旬~10月。腐葉土などの多い土を好む。覆土はあまり深くしない。肥料は油かすを少し与える。耐寒性球根植物なので,鉢植えの場合は暖かい部屋などには入れないようにする。球根が小さいので樹陰などに植えたときは排水をよくして,2~3年は掘り上げないほうがよい。繁殖は実生(開花まで3~4年かかる)と分球による。
執筆者:川畑 寅三郎
伝説によれば,アダムとイブが楽園を追われたとき,天使がイブを慰めるため降りしきる雪に息を吹きかけたところ,その雪の落ちた場所からこの花が咲き出たという。花言葉は〈希望と慰め〉。早春に開花することから聖燭祭(2月2日,聖母御潔(きよ)めの祝日)の花ともいわれ,純潔の象徴となり,古くは修道院で盛んに栽培され,聖燭祭に祭壇でまかれた。しかしイギリスの田園部では,白い花が屍衣(しい)を連想させるとして忌み嫌い,この花を家の中に持ち込めば不幸が起こると信じられている。
執筆者:荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ヒガンバナ科(APG分類:ヒガンバナ科)の耐寒性秋植え球根草。属名のガランサスよりスノードロップの名で知られている。ヨーロッパおよびカフカス地方原産。球根は小形の鱗茎(りんけい)で、秋植え球根草のなかではもっとも早く開花する。日当りのよい所なら、2月に長さ10センチメートルくらいの線形の葉を2~3枚出し、葉より長い花茎が中心から伸び、頂端に白色で下向きの花をつける。露地植え、鉢植え、ロック・ガーデンなどに適する。
代表種のニバリス種G. nivalis L.は南ヨーロッパの山地の原産。草丈は10センチメートルほどで、冬から早春に花を開く。改良品種が多数ある。エルウェシー種G. elwesii Hook.f.はニバリスより大形で栽培しやすく、開花が早い。
10月、有機質に富む水もちのよい土壌に植える。開花までは日当りのよい所で育成し、その後は半日陰の所に移植して育てる。鉢植えは4号鉢に5球植えとし、花が終わったら日陰に置く。繁殖は分球によるが、実生(みしょう)も可能である。
[平城好明 2019年1月21日]
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