畳のように敷かれた石というのが原義。石を畳み上げるという意で石段の古称でもあった。今日、石畳といえば、道路や広場、庭園などの舗装として敷き詰められた上面が平らな石、または敷き詰められた状態をさす。いずれにしてもそれらは自然の地面を石材によって、交通のために永続的で堅固な場所に変えるためのものであるとともに、その場に描き出されるパターンによって美しい装飾となる。近代のアスファルトやコンクリートの舗装が機能面などで優れていながら、表情が乏しいのとは対照的に、石畳は広場や道路、庭園に独特の表情を与えている。
石畳の起源は古く、原始時代にさかのぼることができる。古代オリエント、インダスの都市ではかなり大掛りに用いられたことが知られ、広大な版図を領有した古代ローマ帝国も、石畳で舗装された街道網で結ばれていた。また都市内の道路も広場も石が敷き詰められ、とくにポンペイ遺跡の轍(わだち)の跡が残る舗道は印象的である。都市文明の凋落(ちょうらく)のあと、ふたたび興隆を迎えた中世都市も石畳の中心広場や主要街路をもち、ルネサンスやバロックの時代には、幾何学的パターンを描くモニュメンタルな広場の石畳が、都市空間の豊かな装飾要素となった。またイスラム文化圏で展開された中庭の舗装や、わが国の社寺境内の参道、庭園、坂道の石畳なども忘れるわけにはいかない。
[長尾重武]
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
…言葉の本来の意味は,石で築いた境界の工作物であるが,斜面の土止めなどのために石で築いた壁も石垣と呼ぶ。石崖(いしがけ)と呼ぶこともあり,古くは石畳(いしだたみ)という表現も使われた。日本の石垣は,桃山時代の城郭でもっとも大規模なものに発達したが,この場合も,防御用の境界工作物であるとともに,斜面の土止めの役割を果たしている。…
…融凍攪拌作用によるものは凍土現象として一括される。構造土や岩屑が薄く平たん地をおおう石畳,草や矮小灌木におおわれた径1m前後,高さ数十cmの凍結坊主とよばれる半球状の土の高まりは,地表条件の違うところに類似の作用が働いてできたものである。斜面にはソリフラクションの前面が高さ数十cmの微起伏をもって舌状にのびたソリフラクションローブsolifluction lobe,数mm以下の細粒物質と数cm大の岩片が互層をなす成層斜面堆積物が分布する。…
…石畳,霰(あられ)などともいわれ,幾何学模様のもっとも簡単なものとして洋の東西を問わず古くから種々のものの意匠模様に用いられている。ことに染織品の模様としては,これの土台になる裂地(きれじ)の構造が,直交する経緯(たてよこ)の糸で組織されたものであるから縞とともにきわめて織物に自然な模様として,その発生はおそらく原始時代にさかのぼるものであろう。…
※「石畳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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