石畳(読み)イシダタミ

デジタル大辞泉 「石畳」の意味・読み・例文・類語

いし‐だたみ【石畳/×甃】

庭や道路などで、平らな敷石を敷き詰めた所。また、その敷石。
石段
文様の名。方形の石を一面に敷き並べたような形状図案化した総文様。織り文様もあれば染め文様もあり、染め文様には色で互い違いに配列したものが多い。近世市松いちまつという。
紋所の名。文様の石畳をかたどったもの。

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精選版 日本国語大辞典 「石畳」の意味・読み・例文・類語

いし‐だたみ【石畳・甃】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 庭や道路などに敷きつめてある、方形または長方形の平らな石。また、その石を敷きつめた所。敷石。石敷。〔新訳華厳経音義私記(794)〕
    1. [初出の実例]「過夜夢に白蛇・赤蛇・いしたたみの様に文ある蛇三疋見了」(出典:多聞院日記‐天正一三年(1585)九月二〇日)
  3. いしだん(石段)」の古称。
    1. [初出の実例]「三熊野の神くら山の石だたみのぼりはてても猶祈るかな〈藤原実氏〉」(出典:続古今和歌集(1265)神祇・七三六)
  4. 模様の一つ。方形を、上下左右に色が互い違いになるように並べた模様。染物織物などに用いる。近世、市松という。また、この細かい模様を、小石畳、あられという。
    1. [初出の実例]「こうばいのにほひのうはぎ、もん、いしだたみ」(出典:たまきはる(1219))
  5. の模様を織り出したござ。うきよござ。
    1. [初出の実例]「堅くない座敷備後の石畳」(出典:雑俳・柳多留‐七七(1823))
  6. 紋所の一つ。の模様をかたどった紋。その数により三石畳、四石畳、八石畳、九石畳があり、配列の方法により、三寄石畳、四組石畳、石畳車などの種類がある。
    1. [初出の実例]「乗手はしれた挑灯(ちょうちん)に、上と下とは石だたみ、中にふたゑの松かはびし」(出典:浄瑠璃曾我会稽山(1718)四)
  7. 指物(さしもの)で、箱などのかどを組み合わせる木口が交互に現われるようにしたもの。
    1. 石畳<b>⑥</b>
      石畳
  8. いしだたみがい(石畳貝)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「石畳」の意味・わかりやすい解説

石畳
いしだたみ

畳のように敷かれた石というのが原義。石を畳み上げるという意で石段の古称でもあった。今日、石畳といえば、道路や広場庭園などの舗装として敷き詰められた上面が平らな石、または敷き詰められた状態をさす。いずれにしてもそれらは自然の地面石材によって、交通のために永続的で堅固な場所に変えるためのものであるとともに、その場に描き出されるパターンによって美しい装飾となる。近代アスファルトコンクリートの舗装が機能面などで優れていながら、表情が乏しいのとは対照的に、石畳は広場や道路、庭園に独特の表情を与えている。

 石畳の起源は古く、原始時代にさかのぼることができる。古代オリエント、インダスの都市ではかなり大掛りに用いられたことが知られ、広大な版図を領有した古代ローマ帝国も、石畳で舗装された街道網で結ばれていた。また都市内の道路も広場も石が敷き詰められ、とくにポンペイ遺跡の轍(わだち)の跡が残る舗道は印象的である。都市文明の凋落(ちょうらく)のあと、ふたたび興隆を迎えた中世都市も石畳の中心広場や主要街路をもち、ルネサンスやバロックの時代には、幾何学的パターンを描くモニュメンタルな広場の石畳が、都市空間の豊かな装飾要素となった。またイスラム文化圏で展開された中庭の舗装や、わが国の社寺境内の参道、庭園、坂道の石畳なども忘れるわけにはいかない。

[長尾重武]


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事典・日本の観光資源 「石畳」の解説

石畳

(愛媛県喜多郡内子町)
美しい日本のむら景観100選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の石畳の言及

【石垣】より

…言葉の本来の意味は,石で築いた境界の工作物であるが,斜面の土止めなどのために石で築いた壁も石垣と呼ぶ。石崖(いしがけ)と呼ぶこともあり,古くは石畳(いしだたみ)という表現も使われた。日本の石垣は,桃山時代の城郭でもっとも大規模なものに発達したが,この場合も,防御用の境界工作物であるとともに,斜面の土止めの役割を果たしている。…

【周氷河地形】より

…融凍攪拌作用によるものは凍土現象として一括される。構造土や岩屑が薄く平たん地をおおう石畳,草や矮小灌木におおわれた径1m前後,高さ数十cmの凍結坊主とよばれる半球状の土の高まりは,地表条件の違うところに類似の作用が働いてできたものである。斜面にはソリフラクションの前面が高さ数十cmの微起伏をもって舌状にのびたソリフラクションローブsolifluction lobe,数mm以下の細粒物質と数cm大の岩片が互層をなす成層斜面堆積物が分布する。…

【市松模様】より

…石畳,霰(あられ)などともいわれ,幾何学模様のもっとも簡単なものとして洋の東西を問わず古くから種々のものの意匠模様に用いられている。ことに染織品の模様としては,これの土台になる裂地(きれじ)の構造が,直交する経緯(たてよこ)の糸で組織されたものであるから縞とともにきわめて織物に自然な模様として,その発生はおそらく原始時代にさかのぼるものであろう。…

※「石畳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」