スマート爆弾(読み)スマートばくだん(英語表記)smart bomb

翻訳|smart bomb

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スマート爆弾」の意味・わかりやすい解説

スマート爆弾
スマートばくだん
smart bomb

ベトナム戦争アメリカ軍が使用した誘導爆弾の俗称。爆弾には推進力はないが,若干の操縦装置を有し,小範囲の落下弾道の修正を行うことができる。誘導用のセンサーは,レーザーまたはテレビジョン TV装置を使用する。母機または誘導機がレーザー光線によって目標を照射すると目標からの反射波を爆弾が感知し,これに向うように操縦装置を動かして弾道を修正して目標に命中させる。 TV誘導の場合には,爆弾の TVカメラが目標を捕えると,母機を離れたあと,この目標に向うように爆弾が操縦され,落下弾道が修正されて命中する。 1972年5月ベトナムのタンホア鉄橋破壊のために初めて使用され,その後,鉄橋,鉄道,発電所,倉庫など重要な目標を攻撃航空機の大きな損害なしに破壊することができた。しかしレーザー爆弾の場合には,レーザー照射機が目標付近からの反撃によって相当の危険にさらされるおそれがあり,TV爆弾の場合には夜間,雨,霧などの障害を受け,また大規模な煙幕などによる妨害によって効果は減殺される。最近のスマート爆弾には,射ちっぱなし式 fire and forget,つまり目標にスマート爆弾をロックオンしたあと,母機は命中までレーザー照射する必要なく回避運動に移れる方式のものもある。湾岸戦争ではアメリカ軍がイラクバグダードにある軍事目標に対してスマート爆弾を使用した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「スマート爆弾」の意味・わかりやすい解説

スマート爆弾
すまーとばくだん
smart bomb

精密誘導兵器一種。スマート爆弾という名称はアメリカ軍の俗語である。レーザー光線あるいはテレビカメラを利用して、目標に爆弾を自動的に誘導するので、命中精度がきわめて高い。ミサイルではない。ベトナム戦争末期にアメリカ空軍が初めて使用して威力を発揮した。1981年6月のイスラエル空軍によるイラクの原子炉爆撃にもこの爆弾が使われたといわれている。

服部 学]

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