ずは(読み)ズハ

デジタル大辞泉の解説

[連語]《打消しの助動詞「ず」の連用形+係助詞「は」》
打消しの順接仮定条件を表す。もし…なかったら。
「ま梶(かぢ)貫(ぬ)き舟し行か―見れど飽かぬ麻里布の浦に宿りせましを」〈・三六三〇〉
…(し)ないで。
「立ちしなふ君が姿を忘れ―世の限りにや恋ひ渡りなむ」〈・四四四一〉
[補説]中世で「ずわ」と発音したが、室町末期以降、音変化して「ざ」としても用いられた。下に推量・願望を表す語を伴うことが多い。1は、中世以降「ずんば」、近世以降「ずば」の形をもとる。

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大辞林 第三版の解説

連語
打ち消しの助動詞の連用形に係助詞の付いたもの。現在ではズワと読む
打ち消しの意の中止法または連用修飾を表す。ずに。ないで。 なかなかに人とあら-酒壺になりにてしかも酒に染みなむ/万葉集 343 言繁き里に住ま-今朝鳴きし雁にたぐひて行かましものを/万葉集 1515
打ち消しの意の順接仮定条件を表す。ないならば。もし…なければ。 けふ来-あすは雪とぞ降りなまし消えずはありとも花と見ましや/古今 春下 ずはは本来清音であるが、のちにワに転じた。また、ずばずんばの形も生じた。さらに近世口語ではざあにも転じた

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精選版 日本国語大辞典の解説

(打消の助動詞「ず」の連用形に係助詞「は」の付いたもの。現在では「ずわ」と読んでいる)
① 上代の語法で、連用修飾または連用中止法の「ず」に「は」が付いて強調、提示の役割を果たす。…ずに。…ないで。
※古事記(712)中・歌謡「いざ吾君(あぎ) 振熊が 痛手負は受波(ズハ) 鳰鳥の 淡海の海に 潜きせなわ」
※万葉(8C後)五・八六四「後れ居て汝が恋せ殊波(ズハ)御園生の梅の花にもならましものを」
② 順接の仮定条件を表わす。…なくては。…ないならば。
※万葉(8C後)二〇・四四〇八「あらたまの 年の緒長く あひみ受波(ズハ) 恋しくあるべし」
※史記抄(1477)一一「母が死たれども卿相にならずわかへるまいと盟たほどに」
[語誌](1)①の解は、橋本進吉の説による。
(2)①②ともに「は」はもと清音で後にワに転じたものと認められる。近世の口語では、②の場合、ズワはさらにザア・ザに転じている。また、近世の文語では「ずは」がズバと読まれた例が見られる。富士谷成章は「あゆひ抄(稿本)」で「あらましの内すはなくはなどは半濁也」といって、ズワと読むべきことをわざわざ注意しており、本居宣長は「詞の玉緒」ではズバとしている。→ずんば
(3)「ずは」の「は」は係助詞の「は」であって、後に動詞を受ける接続助詞「ば」に混同されたものと考えられる。ただし、この清音の「は」を係助詞と見ず、「は」という接続助詞があったと考える説もある。
(4)「古今‐春上」の「今日来ずは明日は雪とぞ散りなまし消えずはありとも花と見ましや〈在原業平〉」の「消えずはありとも」は「消えずとも」を係助詞「は」で強調した例で、①②の場合とは異なる。

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