セミラミス(読み)せみらみす(英語表記)Semiramis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「セミラミス」の意味・わかりやすい解説

セミラミス
せみらみす
Semiramis

伝説的なバビロンの女王。シリアの女神デルケトとカユストロスとの間に生まれたが、すぐに捨て子にされ、鳩(はと)と羊飼いに育てられた。成長後はその美貌(びぼう)を見込まれてアッシリア王ニノスの臣オンネスと結婚し、その才知で夫を助けたが、それがかえって仇(あだ)となり、彼女の軍略にほれ込んだニノス王が彼女をオンネスからむりやり奪い取って妻とした。1子ニニュアスが生まれたが、王がまもなく死去したため、彼女が王位を継いで長くバビロンを支配した。数々の建築造営工事を行ったが、なかでもとくに空中庭園は有名である。また彼女は全アジアを征服したのち、その矛先をインドにまで向けたが、のちに王位を息子に譲って死後は鳩に変身したという。アッシリア王シャムシ・アダド5世の妃(きさき)サムラマトがそのモデルとされる。

[丹下和彦]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「セミラミス」の意味・わかりやすい解説

セミラミス
Semiramis

アッシリアの伝説上の女王のギリシア名。半身半魚の女神デルケトーの娘。戦いと愛の女神。捨て子の彼女はハトに養われていたところを羊飼いたちに発見され,育てられた。美しく賢い彼女は大臣オンネスの妻となったが,バクトラの戦いのとき,夫に従った彼女の作戦によりニノス王は勝利を収めた。王は彼女を妃にしたいとオンネスに迫り,オンネスは困り果てたあげく自殺した。妃となった彼女は,王の死後,女王として君臨し,バビロンに都を築き,特にユーフラテス川をはさんだ東西の城,なかでも西の城のバニロンの吊り庭園は工学技術の粋を集めた建造物として知られ,世界の七不思議の一つとされている。ロッシーニ歌劇セミラーミデ』 (1823) は彼女を歌っている。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報