日本大百科全書(ニッポニカ) 「セメンシナ」の意味・わかりやすい解説
セメンシナ
せめんしな
Semen Cina
[学] Artemisia cina (Berg) Willkomm.
キク科(APG分類:キク科)の多年草でシナヨモギともいう。中央アジアのトルキスタン地方、カザフスタン地方南部に自生する。茎は高さ30~50センチメートルで、下部は木化して半低木状となる。茎の初期は多毛だが、のちに無毛となる。葉は灰緑色で長さ約2センチメートル、カワラヨモギに似た形で2回羽状に分裂し、裂片は線形となる。夏に分枝上に多数の頭状花序を生じ、頭花は鈍頭の長卵形で、3~5個の管状花だけからなる。総包片は12~20個あり、その背面の中央を走る主脈の近くには多数の腺毛(せんもう)がある。この腺毛の中にリモネン、ピネン、シネオールなどの精油とともにサントニンが存在する。花がまだ開かないときに摘んで乾燥したものが生薬(しょうやく)のシナ花(か)で、回虫駆除の効力をもつサントニンを1~3.5%含む。この植物の栽培とサントニン製造は、かつてはソ連の独占的専売事業で、苗と種子の輸出を厳禁していた。しかしその後、サントニンを含有する数種のヨモギ属植物が判明し、日本ではヨーロッパ原産のミブヨモギA. maritima L. subsp. monogyna Waldst. et Kit.を導入して京都市の壬生(みぶ)で栽培に成功した(1929)。和名は、これを記念してつけられたものである。パキスタン原産のクラムヨモギA. kurramensis Qazilbashものちに導入された。
[長沢元夫 2022年3月23日]