翻訳|santonin
キク科ヨモギ属植物Artemiciaのうちシナヨモギやミブヨモギ,クラムヨモギなどの花のつぼみから分離精製した無色の結晶または粉末。水にはほとんど溶けない。駆虫薬としてカイチュウ駆除に用いられ,カイニン酸との合剤が優秀で製品も多い。カイチュウは31~150時間後に駆除される。サントニンを多量に服用すると感覚異常,頭痛,腹痛などの副作用を起こすことがあるが,感覚異常のなかでも黄視症は最も現れやすく,ときには少量の服用でも現れるが,一過性で短時間で消失する。サントニンの起源は古く,古代ギリシア,ローマ,アラビアおよびペルシアの医師たちは,すでにヨモギ属のある種の植物の頭状花に駆虫作用があることを知っていた。しかし,これらの頭状花を種子semenと信じていたらしく,サントニンのことを俗にセメンまたはセメンエンともいうのはこのためである。サントニンという名は,原料植物が聖地パレスティナ方面からくると考えられて,聖なるものを意味するラテン語のsantonicumから由来したとも,産地の名に由来したともいわれる。
日本には1927年ドイツ産Artemisia monogyna Waldst et Kit.の種子がもたらされ,京都市壬生(みぶ)の地で試作したのでミブヨモギと名づけられ,多年にわたる品種改良の結果,現在では,北海道,東北,長野地方で栽培されている。50年に西パキスタンから輸入されたクラムヨモギArtemisia kurramensis Quazilbashも各地で栽培されている。
執筆者:上野 晃一+北川 晴雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
駆虫薬。無色の結晶または白色の結晶性粉末で、においはなく、味は初めはないが後にわずかに苦い。回虫、蟯虫(ぎょうちゅう)、鞭虫(べんちゅう)の駆除に用いる。キク科の植物であるシナヨモギ、ミブヨモギ、クラムヨモギの開花直前のつぼみにもっとも多く含まれており、これらの植物の種子状をした小花頭をシナ花(通称セメンシナsemen cina)といい、これから1830年にドイツで結晶として初めて抽出され、メルク社からサントニンの名で発売された。かつて、日本ではセメンまたはセメン円(えん)とよばれた。ミブヨモギは、日本新薬がヨーロッパ産の種子を入手して、京都市の壬生(みぶ)で試作したのでこの名がついた。副作用として黄視症がみられ、頭痛、悪心(おしん)、腹痛などが現れ、肝障害のあるところから、アメリカでは使用していない。成人では1回0.1グラムを夜に服用し、翌朝、朝食前に0.1グラム服用する。極量は1日0.3グラム。粉末、錠剤(20ミリグラム含有)がある。マクリの有効成分であるカイニン酸との合剤のカイニン酸・サントニン散もある。
[幸保文治]
C15H18O3(246.30).セスキテルペンの一種.キク科Artemisia cinaのつぼみなどに1~4% 含まれているが,わが国ではミブヨモギA.maritimaから単離している.回虫の頭部神経にはたらくけいれん毒で,駆虫薬として用いられる.α-サントニンは,融点171~172 ℃.-173°(エタノール).11位の異性体であるβ-サントニンは,融点216~218 ℃.-137.2°(クロロホルム).LD50 900 mg/kg(マウス,経口).[CAS 481-06-1]
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…開花直前のつぼみをシナ花(英名wormseed,levant wormseed)という。乾燥したものではサントニンsantoninを2%ほど含み,回虫駆除薬とする。西アジア,トルキスタン地方に分布する。…
…おもな駆虫薬には次のようなものがある。(1)サントニン 主としてカイチュウ(回虫)の特効薬であるが,ギョウチュウ(蟯虫),ベンチュウ(鞭虫)にも有効。黄視,頭痛,吐き気などの副作用がみられる。…
…開花直前のつぼみをシナ花(英名wormseed,levant wormseed)という。乾燥したものではサントニンsantoninを2%ほど含み,回虫駆除薬とする。西アジア,トルキスタン地方に分布する。…
…和名は昭和の初期にドイツから輸入され,京都市の壬生(みぶ)で試植されたところからつけられた。トルキスタン地方に自生するシナヨモギとともに,回虫駆除薬のサントニンを得るために栽培される。小花がすべて両性花であることが特徴である。…
※「サントニン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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