ロシア・ソ連邦の作家。本名ポポフPopov。ドン・コサックの士官の家に生まれ,少年時代を父の勤務のためポーランドで送った。1883年ペテルブルグ大学に入学したが,ロシア皇帝アレクサンドル3世襲撃事件に関する革命的文章を書いてアルハンゲリスク州へ流刑された。89年から文筆活動を始め,当時の労働者の苦しい生活を描いた《氷原にて》(1889),《大地の下で》(1895)で注目される。1905年の革命後ゴーリキーとの交流もあって新境地を開き,私有制の矛盾をついた《砂地》(1909)を発表,L.N.トルストイから激賞された。18年のコサック反乱を描いた《鉄の流れZheleznyi potok》(1924)はソビエト文学の古典として評価されている。
執筆者:木村 浩
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ロシアの小説家。本姓ポポーフ。コサックの家に生まれる。ペテルブルグ大学在学中アレクサンドル3世の暗殺未遂に関する檄文(げきぶん)を書き、北のアルハンゲリスク県へ3年の流刑に処せられた。文学活動を始めたのは、極北の地で執筆した短編『氷原にて』(1889)によってである。『車両連結手』(1903)、トルストイに激賞された『砂地』(1909)などの短編で、労働者・農民の絶望的な状況の否定から革命の覚醒(かくせい)に至る道程を示し、長編『ステップの町』(1912発表)では資本主義の発展とプロレタリアの成長を描いた。この間ゴーリキーを知り、「水曜会」からズナーニエ派に加わり、新写実主義の有力な旗手であった。代表作の『鉄の流れ』(1924)は、無自覚な群衆が国内戦のたび重なる戦闘を経て、鉄の流れのような力強い集団に変貌(へんぼう)する長編小説で、プロレタリア文学の古典となった。
[島田 陽]
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