セン(閃)亜鉛鉱 (せんあえんこう)
sphalerite
亜鉛のもっとも重要な鉱石鉱物。理想化学組成はZnS(ウルツ鉱と同じ)であるが,Znの一部はFe,Mn,Cdなどで置換される。ダイヤモンドのC原子を一つおきにZnとSに置き換えた構造をとる。純粋のZnSは淡黄色,透明,樹脂光沢を示すが,Feが増えると黒色,亜金属光沢を呈し,しばしば鉄セン亜鉛鉱と呼ばれる。立方晶系。四面体,六面体(立方体),それらを組み合わせた形をとることが多い。モース硬度3.5~4,比重3.9~4.1。通常,方鉛鉱や黄銅鉱と共生して各地の亜鉛鉱山に産するほか,微量のセン亜鉛鉱は各種の鉱床に普通に見いだされ,岩石中にも見いだされる。鉄の硫化鉱物と共生するセン亜鉛鉱中の鉄の量は,生成時の物理・化学条件(温度,圧力,硫黄の蒸気圧)によって変化するので,セン亜鉛鉱は鉱物・鉱床の生成条件の研究という点からも重要な鉱物である。セン亜鉛鉱は,平均して亜鉛の1/300のカドミウムを含み,各地のカドミウム鉱害の原因の一つと考えられている。
執筆者:由井 俊三
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せん亜鉛鉱
センアエンコウ
sphalerite, zincblende
ZnS.立方晶系,空間群 F4m.格子定数 a0 = 0.5400 nm,単位格子中に4個の基本組成を含む.Fe,Mn,Cd,In,GaなどがZnを置換.へき開{011}完全.硬度3.5~4.密度3.9~4.1 g cm-3.紫外線,X線により蛍光を発する.ピロ電気性であり,塩酸と反応し,H2Sを発生する.1 atm 下では,1020 ℃ まで安定であるが,より高温で六方晶系の繊維亜鉛鉱(ウルツ鉱)に転移する.[別用語参照]せん亜鉛鉱型構造
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
セン(閃)亜鉛鉱【せんあえんこう】
亜鉛の重要な鉱石鉱物。組成はZnSで,通常Feなどの不純分を含む。等軸晶系。結晶は四面体または斜方十二面体。産状は塊状が多い。純粋なものはあめ色で,Fe分がふえると黒色不透明になる。へき開完全。硬度3.5〜4,比重3.9〜4.1。鉱脈,接触交代鉱床,黒鉱鉱床などから産する。
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世界大百科事典(旧版)内のセン亜鉛鉱の言及
【亜鉛】より
…ダイカスト用亜鉛合金としても使用される。[亜鉛合金]
[製法]
亜鉛鉱として最も重要なものはセン亜鉛鉱ZnS(方鉛鉱PbSとつねに共生する)であるが,セン亜鉛鉱の鉱床の酸化帯では,リョウ亜鉛鉱ZnCO3または異極鉱Zn4(OH)2Si2O7・H2Oが重要な鉱物となっている鉱山もある。日本のおもな亜鉛鉱山はすべてセン亜鉛鉱を主体とする。…
【亜鉛鉱物】より
…亜鉛Znをおもな生産金属とする鉱物。亜鉛の原料として重要なのは[セン亜鉛鉱](Zn,Fe,Mn,Cd)S(亜鉛含有量最高67%)で,各種の鉱床に産出する。接触交代鉱床の神岡,中竜など,鉱脈鉱床の豊羽,細倉など,黒鉱鉱床の小坂,花岡などの鉱山が著名。…
【結晶構造】より
… 原子が最密充てん型の配列をとる傾向を示すのはイオン性の結晶に限らない。典型的な共有結合でできているセン亜鉛鉱ZnSでも,S原子は立方最密充てん型の配列をとり(図5-c),その四面体空隙の半数をZnが占めてこの構造がつくられている。結合に方向性のある共有結合にもかかわらずこのような構造が可能なのは,Znの結合軌道の対称が四面体の対称と一致しているからである。…
※「セン亜鉛鉱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」