ソマリア内戦(読み)ソマリアないせん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソマリア内戦」の意味・わかりやすい解説

ソマリア内戦
ソマリアないせん

1991年に勃発した,ソマリア氏族間の抗争。1969年のクーデター以降,一党独裁を続けていたソマリ革命社会主義党 SRSPのムハンマド・シアド・バーレ政権は 1991年1月,統一ソマリア会議 USCによって倒された。しかし政権を握った USC内でアリ・マハディ・ムハンマド大統領とムハンマド・ファラー・アイディド議長の対立が激化し内戦に突入。1992年国際連合安全保障理事会で平和維持のための国連ソマリア活動 UNOSOMの設置を決議。同 1992年12月武力行使を伴う人道援助を実施するためアメリカ軍主導の多国籍軍が派遣され首都モガディシオ制圧した。1993年1月国内武装勢力が即時停戦,武装解除,連邦制の暫定政府樹立に合意。3月武力による強制措置を認めた第2次国連ソマリア活動 UNOSOMII派遣が決議され,5月に多国籍軍と交替した。しかし 6月,国連部隊のパキスタン兵多数が殺害され,UNOSOMIIがアイディド派を攻撃,多数の民間ソマリア人死傷者が出て,国連やアメリカ合衆国への反発が強まり,国連は 1994年ソマリアにおける武力行使を中止した。1996年アイディドが戦闘中に死亡。2000年各国の仲介により和平会議を開催,暫定政府を発足させたが機能せず,2002年から連邦政府樹立に向けた和平協議を開始,2004年和平協定が調印され,2005年暫定連邦政府が発足した。2006年反政府勢力のイスラム法廷連合が台頭し首都モガディシオを制圧。これに対しエチオピア軍事介入を行ない首都を奪還した。2008年暫定連邦政府と穏健派の反政府勢力との間で和平協定が結ばれたが,その後もイスラム法廷連合から派生したアルシャバブが激しく抵抗し内戦が続いた。2012年暫定連邦政府の統治期間終了に向け暫定憲法を採択,新連邦議会を召集し,正式政府が発足した。

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知恵蔵 「ソマリア内戦」の解説

ソマリア内戦

1991年1月、統一ソマリア会議(USC)が首都を制圧。バーレ政権は崩壊し、モハメド暫定政権が樹立された。しかし同年11月、USC内の暫定大統領派とアイディド議長派が内戦に突入、内戦はほかの氏族勢力を巻き込み全土に拡大した。国連安保理は92年12月に米軍主導の多国籍軍を派遣した。国連事務総長の要請により93年1月アディスアベバで国民和解会議が開催され、即時停戦と武装解除、連邦制の暫定政府樹立に合意した。一方、安保理は同年3月、武力強制措置を認めた第2次国連ソマリア活動(UNOSOMII)が多国籍軍に代わることを決議、5月に交替した。しかし6月初め、UNOSOMIIがアイディド議長派と武力衝突、この事態に多国籍軍は撤退を決定。国連はソマリア人に自らによる解決に任せ、95年3月にすべて撤退した。96年8月、アイディド議長が死去し、同勢力は息子フセインに引き継がれた。2004年1月、ケニアで続いている和平協議で主要氏族や武装勢力が統一議会をつくることに合意、同年10月、ナイロビで暫定大統領にアブダラヒ・ユスフが選出された。同年12月、ゲディ暫定首相を任命し、05年1月に暫定政府がナイロビで樹立され、その後拠点をソマリアのバイドアに移した。06年6月、首都モガディシオをイスラム法廷連合が武力制圧し、イスラム法に基づく秩序作りを始めた。これに対し、米国が支援する「平和の回復と対テロ同盟(ARPCT)」が北部を拠点に対立している。

(林晃史 敬愛大学教授 / 2007年)

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「ソマリア内戦」の解説

ソマリア内戦(ソマリアないせん)

エチオピアとのオガデン戦争(1977~78年)敗北後,反政府武力闘争が激化し,1991年1月統一ソマリア会議(USC)が首都モガディシュを制圧し,バーレ政権打倒後モハメド暫定政権を樹立。これにアイディードが率いるソマリア国民同盟(SNA)が反発。さらに同年5月ソマリア国民運動(SNM)が北部(旧イギリス領)のソマリランド共和国としての分離独立を宣言。10派以上の対立による内戦と旱魃による大量難民発生を前に,92年4月国連PKOの国連ソマリア活動(UNOSOM(ユノソム))が設置され,12月アメリカ軍中心の多国籍軍を派遣。翌年5月武力行使を含む初のPKOとしてUNOSOM2を派遣するが,無政府状況下での武力闘争激化のため95年全外国軍撤退。97年12月のカイロ和平協定調印後も内戦状況にある。

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