ソレノイド(読み)それのいど(英語表記)solenoid

翻訳|solenoid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソレノイド」の意味・わかりやすい解説

ソレノイド(気象)
それのいど
solenoid

単位間隔の隣接する二つの等圧面と二つの等温面(または等密度面/等比容面)によって囲まれた空気管をいう。順圧大気では等圧面と等温面が一致(平行)するのでソレノイドは形成されない。傾圧大気の鉛直断面上の任意の閉曲線を考えると、気圧傾度の方向(気圧の増す方向)から温度傾度の方向(温度の増す方向)への循環がこの閉曲線に沿って生じ、その循環の強さは閉曲線に囲まれた領域内のソレノイドの数に比例する。

 鉛直断面は大気を鉛直に切った面であるから、断面でみると等圧面と等温面は等圧線と等温線である。実際の断面図では等圧線は水平に描かれている。ソレノイドの部分では等圧線に対して等温線が大きく傾斜して、等圧線と等温線が井形を形成している。この井形の部分の気層を傾圧層という。

 一方、高層天気図(等圧面天気図)では等高線と等温線が交差して形成する井形の部分がソレノイドの部分である。波形の等高線と波形の等温線の位相がずれている場合によくみられる。そこで生じる循環が反時計回りであれば正の渦度を強め、時計回りであれば正の渦度を弱める(負の渦度を強める)効果を渦度に及ぼす。

[股野宏志]


ソレノイド(電磁気学)
それのいど
solenoid

電気分野で長い円筒状のコイルのこと。ギリシア語のsolen(管)に由来する。鉄心に密に導線を巻き付けた構造である。導線をひと巻きした一重のコイルに電流を流すとその内部に磁場が発生する。導線を多重(n回)に螺旋(らせん)状に巻き付けると内部には、巻き付けた回数倍の磁場が発生する。鉄心をコイルの内部に入れると磁場がより強くなる。電流を流すことにより磁場を発生させて、電磁石として利用する。工学的には、このソレノイドと弁やスイッチなどを組み合わせたアクチュエーターとして、ソレノイドバルブ電磁弁)やソレノイドリレー(電磁リレー)などが利用されている。

[山本将史 2022年3月23日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソレノイド」の意味・わかりやすい解説

ソレノイド
solenoid

円筒形に導線を螺旋状に長く巻いたコイル。ソレノイドの半径を a メートル,長さを l メートル,1m あたりの巻数を n とすれば,電流 I を流すときのソレノイドの中心の磁場 H である。半径に比べて長さが十分に長いとき磁場は HnI になる。ソレノイドの自己インダクタンス L は,LKμπa2n2l で与えられる。μ は鉄などを入れたときの芯物質の透磁率で,空芯のときは空気の透磁率 μ0=4π×10-7 を用いる。K は半径と長さの比 a/l の関数で,長岡半太郎によって計算されたので,長岡係数と呼ばれる。十分に長いソレノイドでは K=1 である。

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