ソンタグ(読み)そんたぐ(英語表記)Susan Sontag

デジタル大辞泉 「ソンタグ」の意味・読み・例文・類語

ソンタグ(Susan Sontag)

[1933~2004]米国の女性批評家・作家。芸術や医療、政治など幅広い分野について批評活動を行った。小説「死の葬具」、評論「反解釈」「写真論」「ラディカルな意志のスタイル」「隠喩としての病」など。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ソンタグ」の意味・わかりやすい解説

ソンタグ
そんたぐ
Susan Sontag
(1933―2004)

アメリカの女流小説家、批評家。ハーバード大学その他に学んだあと、夢と現実の間の微妙な境地を探り、自己の実体を失いかけた人物を描く長編恩人』(1963)でメリット賞を受賞、『死の装具』(1967)、短編集『わたしエトセトラ』(1978)などで新しい感性の作品を世に問い、批評活動では『反解釈』(1966)や『ラディカルな意志のスタイル』(1969)で文学作品の内容よりも形式を重んじる批評を提唱ほかに『ハノイで考えたこと』(1969)、『写真論』(1977)、『隠喩(いんゆ)としての病い』(1978)、『土星の徴しの下で』(1980)、『火山に恋して』(1992)、『In America』(2000。全米図書賞受賞)や『この時代に想うテロへの眼差(まなざ)し』(2002)などがある。戦争や武力行使に対する批評でも注目を浴び、ベトナム戦争への反対活動等も行った。また、2001年9月に起こったアメリカ同時多発テロに対しては「自称“世界の超大国”への攻撃である」などと主張したほか、ナショナリズムに傾いていた当時のアメリカ政府やメディアの論調を批判、03年のイラク戦争には反対の姿勢をみせていた。小説、批評のほか、演劇にも携わり、1993年には戦時下のサライエボサラエボ)でベケット戯曲『ゴドーを待ちながら』を上演、また映画製作も数本手がけた(『案内者なき旅』(1983)など)。1994年モンブラン文化賞受賞。

[杉浦銀策]

『富山太佳夫訳『土星の徴しの下に』(1982・晶文社)』『川口喬一訳『ラディカルな意志のスタイル』(1986・晶文社)』『斎藤数衛訳『死の装具』(1990・早川書房)』『富山太佳夫訳『新版 隠喩としての病い・エイズとその隠喩』(1992・みすず書房)』『高橋康也他訳『反解釈』(1996・筑摩書房)』『富山太佳夫訳『火山に恋して』(2001・みすず書房)』『木幡和枝訳『この時代に想うテロへの眼差し』(2002・NTT出版)』『北條文緒訳『他者の苦痛へのまなざし』(2003・みすず書房)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「ソンタグ」の意味・わかりやすい解説

ソンタグ
Susan Sontag
生没年:1933-2004 

アメリカの批評家,小説家。ユダヤ系の両親のもとにニューヨークに生まれ,シカゴ大学卒業後,ハーバード,オックスフォード,パリの諸大学に学んだ。1950年に心理学者フィリップ・リーフと結婚,59年に離婚。60年代初めから《ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス》《コメンタリー》などの雑誌に書いた評論を集めた《反解釈》(1966)によって,批評家としての地位を確立した。表題となった評論は,〈内容〉や〈解釈〉を偏重する在来の批評に対して,〈形式〉を感受する〈官能美学〉,つまり理性あるいは西欧近代合理主義に対する感性の復権を唱えたマニフェストである。以後《ラディカルな意志のスタイル》(1969),《写真論》(1977),《隠喩としての病》(1978),《土星の徴しの下に》(1980)などの評論によって,芸術と思想の諸分野にわたる前衛的批評活動を展開。〈ニューヨーク知識人〉を代表する一人である。《死の装具》(1967),《わたしエトセトラ》(1979)などの小説のほか,《食人種のためのデュエット》(1969)などの映画作品もある。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ソンタグ」の意味・わかりやすい解説

ソンタグ
Sontag, Susan

[生]1933.1.16. ニューヨーク,ニューヨーク
[没]2004.12.28. ニューヨーク,ニューヨーク
アメリカの女性作家,批評家。 1951年シカゴ大学卒業後,ハーバード大学で修士号取得。雑誌の編集に従事,諸大学で哲学を講じた。処女作はヌーボー・ロマン風の小説『恩恵者』 The Benefactor (1963) 。才気煥発に新しい感覚を主張する『反解釈』 Against Interpretation and Other Essays (1966) ,『ラディカルな意志のスタイル』 Styles of Radical Will (1969) ,『写真論』 On Photography (1977,全米図書批評家賞) ,『隠喩としての病い』 Illness as Metaphor (1979) などの数々の評論,エッセーを発表。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディア 「ソンタグ」の意味・わかりやすい解説

ソンタグ

米国の女性批評家,小説家,演出家。ユダヤ系。1961年ころより評論活動を開始,1966年に批評集《反解釈》を出版,新たな感性の復活を唱え,辛辣な文明批評を展開し,批評家としての声価を確立。《ラディカルな意志のスタイル》(1969年)では急進的な政治的立場を表明。《写真論》(1977年),《隠喩としての病》(1978年),《隠喩としてのエイズ》(1989年)では文化史的観点からの文明論を展開。小説には《死の装具》(1967年),《火山に恋して》(1992年)など。映画《食人種のためのデュエット》(1971年)を監督。1994年には戦火のサラエボで現地の俳優を起用しベケットの《ゴドーを待ちながら》を演出した。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のソンタグの言及

【SF映画】より


[インベーダーと放射能怪獣]
 1950年代のSF映画の二大特色は〈インベーダー物〉と〈放射能怪獣物〉で,映画史家S.C.アーリーによれば〈怪奇映画が50年代になってSF映画になって現れた〉ことになり,〈狼男やミイラ男や歩く死骸(ゾンビ)が,宇宙からの侵略者や核爆発の放射能によって眠りからさめた太古の恐竜,あるいは巨大化した生物になった〉のである。〈インベーダー物〉についていえば,当時,前述の《地球の静止する日》のような平和の使者的宇宙人は例外で,以後,76年の《地球に落ちてきた男》,77年の《未知との遭遇》における〈友好的宇宙人〉の登場まで,SFのスクリーンは,スーザン・ソンタグのいう〈惨劇のイマジネーション〉〈破壊の美学〉一色に染め上げられることになる。その代表作が1953年の《宇宙戦争》で,パラマウントが握っていた映画化権がやっと実を結ぶ。…

【病気】より

…このような病気の観念の変換にあわせて,J.M.メイらの医学者やM.D.グルメクなどフランスの歴史家たちが,20世紀後半になって,あらたな〈病気の歴史学〉を提唱しはじめている。医学的認識の変化を広い歴史的文脈の中でとらえかえしたM.フーコーの《臨床医学の誕生》(1963),結核や癌といった病気をその〈神話〉から解き放つことをめざしたS.ソンタグの《隠喩としての病い》(1978)のような仕事も,以上のような動向と軌を一にするものといえる。 第3に,病気の発生はいちおう前提におくとしても,病気に対する社会的対応には,同様に歴史的な諸類型があることに気づかれる。…

※「ソンタグ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

世界の電気自動車市場

米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...

世界の電気自動車市場の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android