日本大百科全書(ニッポニカ) 「タイワンヨロイアジ」の意味・わかりやすい解説
タイワンヨロイアジ
たいわんよろいあじ / 台湾鎧鰺
malabar trevally
[学] Platycaranx malabaricus
硬骨魚綱スズキ目アジ科アジ亜科に属する海水魚。愛知県、三重県、奄美(あまみ)大島などの南日本の太平洋岸および、台湾、黄海(こうかい)、東シナ海、南シナ海、インドネシア、オーストラリア北東岸などインド洋、西太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布する。体は強く側扁(そくへん)し、体高は高く卵円形。頭の外郭は急角度で上昇し、吻(ふん)から項部（背びれ起部より前の後頭部）はほぼ直線状。吻端は鈍く、吻長は眼径よりかなり長い。目は吻端と尾柄(びへい)中央部を結ぶ水平線より上方にある。上顎(じょうがく)の後端は目の前縁下方に達する。上下両顎に絨毛(じゅうもう)状の歯帯があり、前部の外側に数本の円錐歯(えんすいし)がある。鋤骨(じょこつ)（頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨）に三角形状の歯帯がある。鰓耙(さいは)は上枝に8～12本、下枝に21～27本。背びれは2基で、第1背びれは8棘(きょく)、第2背びれは1棘20～23軟条。臀(しり)びれは1棘17～19軟条で、前方に2本の遊離棘がある。第2背びれと臀びれの前部の軟条は鎌(かま)状であるが、伸長した軟条はなく、その長さは頭長より短い。側線は緩く湾曲し、第2背びれの第12～14軟条下に達した後、体側の中央を後方に向かって直走する。直走部の長さは湾曲部より短く、湾曲部のおよそ65％。稜鱗(りょうりん)（鋭い突起を備えた肥大した鱗(うろこ)。一般には「ぜんご」「ぜいご」ともいう）は小さく、19～36枚。胸部の腹面に無鱗域があり、後端は腹びれの基底を越えて後方に伸び、臀びれの起部まで達する個体もいる。側面の無鱗域は胸びれの基底の無鱗域に達し、さらに胸びれ基底の上端を越えて上方に伸びる。体は背側面では青緑色で、腹側面では銀色。背びれ、臀びれおよび尾びれは淡緑黄色～暗色。臀びれ基部の鰭膜(きまく)はしばしば灰白色。鰓蓋上端に黒色斑(はん)がある。舌は灰褐色～褐色。サンゴ礁や岩礁域にすむが、稚魚は湾内の浅所の砂底に見られる。おもに底生の小さい魚類、頭足類、甲殻類などを食べる。最大尾叉長(びさちょう)は約24センチメートル。定置網、刺網(さしあみ)などでときどき混獲される。刺身、煮魚、塩焼き、フライなどにするとおいしい。
本種は、以前はヨロイアジ属Carangoidesに入れられていたが、魚類研究者の木村清志(せいし)（1953― ）らが、2022年（令和4）のDNAの分析と形態の観察によって、ヒシヨロイアジなどとともにPlatycaranxを新設し、同年、それにタイワンヨロイアジ属の新和名を提唱した。
本種は胸部の無鱗域が胸びれの基部上端よりも上方へ伸びることで、ヨロイアジ、ヒシヨロイアジ、マルヒラアジなどの似た体形の他種と容易に区別できる。
［尼岡邦夫 2024年4月17日］