タキシラ(読み)たきしら(英語表記)Taxila

日本大百科全書(ニッポニカ) 「タキシラ」の意味・わかりやすい解説

タキシラ
たきしら
Taxila

パキスタン北部、イスラマバード北方にある都市遺跡。この遺跡は1980年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。サンスクリット語ではTakaśilā、漢訳仏典などでは特叉尸利、得叉始羅、玄奘(げんじょう)の『大唐西域(さいいき)記』では叉始羅(国)と記されている。古代西北インドの商業、交通、政治、学術の中心地で、マウリヤ朝時代にはアショカ王の王子、クナーラが総督として統治していたともいわれる。タキシラには多くの遺跡があるが、1912年以後、イギリスのJ・マーシャルSir John Hubert Marshall(1876―1958)が指揮したインド考古局が、都城址(とじょうし)、仏教寺院址を発掘し、マウリヤ朝からクシャン朝に及ぶ西北インドの文化解明に多大の貢献をした。都城址はビリ・マウンド(マウリヤ朝時代)、シルカップ(インド・グリーク、インド・スキタイ、インド・パルティア)が発掘されたが、クシャン朝時代のシルスフ遺跡は未発掘である。仏教寺院址としては、アショカ王創建のダルマラージカ仏塔、ジャウリヤーンなど多数発掘され、出土した仏像および都城址出土の工芸品はタキシラ博物館に収蔵されている。

[田辺勝美]

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