たばこ関連病

六訂版 家庭医学大全科 「たばこ関連病」の解説

たばこ関連病
(中毒と環境因子による病気)

 これまでに行われてきた多くの疫学調査で、喫煙は多くの病気の原因になることがわかり、これらを総称して「たばこ関連病」と呼んでいます。

主なたばこ関連病

①がん:肺がん、喉頭がん、口腔がん、咽頭がん、食道がん胃がん肝臓がんなどの増加がみられます。とくに肺がんの原因の70%を占め、すべてのがんを平均すると20~30%になります(図5)。

②循環器系の病気:喫煙は、高血圧、高コレステロール血症とならんで心筋梗塞(しんきんこうそく)の三大危険要因です。そのほか、脳血管障害(とくに脳梗塞(のうこうそく)くも膜下出血)、大動脈瘤(だいどうみゃくりゅう)末梢血管の閉塞性疾患、高血圧、善玉コレステロールの低下などの原因になります。

③呼吸器系の病気:高齢者でみられる肺気腫(はいきしゅ)慢性気管支炎などは大部分が長期にわたる喫煙が原因とされています。気管支喘息(ぜんそく)発作を引き起こすともされています。

 そのほか、胃・十二指腸潰瘍慢性胃炎、歯周病などの消化器系の病気、胎児障害、妊娠率の低下、流産妊婦の異常などの生殖器系の病気、アルツハイマー病聴力障害、睡眠障害などの脳・神経系の病気、全体としての寿命の短縮や老化の促進もたばこ関連病とされており、非喫煙・禁煙でこれらの病気が減ることも証明されていいます。

受動喫煙によるたばこ関連病

 喫煙する本人だけでなく、たばこを吸う夫をもつ家庭の主婦でも肺がん(1.4~2倍)、鼻腔(びくう)がん、脳腫瘍、乳がんや心筋梗塞、慢性呼吸器病などが増加すると報告されています。母親の喫煙による乳幼児肺炎乳幼児突然死症候群、胎児・新生児障害も報告されています。

たばこ関連病による死亡者と医療費

 WHO(1995年)の発表によると、日本人の喫煙が関係した死亡者は、全体の死亡者の14%、米国では20%とされています。また日本人全体の喫煙による病気の医療費は年間で3兆2000億円(2000年)になります。直接的にも間接的にも喫煙の影響は大です。


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

今日のキーワード

排外主義

外国人や外国の思想・文物・生活様式などを嫌ってしりぞけようとする考え方や立場。[類語]排他的・閉鎖的・人種主義・レイシズム・自己中・排斥・不寛容・村八分・擯斥ひんせき・疎外・爪弾き・指弾・排撃・仲間外...

排外主義の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android