日本大百科全書(ニッポニカ) 「タラント」の意味・わかりやすい解説
タラント
たらんと
Taranto
イタリア南部、プーリア州にあるタラント県の県都で、港湾・工業都市。ギリシア名タラスTaras、ラテン名タレントゥムTarentum。人口20万1349(2001国勢調査速報値)。タラント湾の北部湾奥、マーレ・ピッコロとよばれる広いラグーン(潟湖(せきこ)、面積20平方キロメートル)の入口に位置する。西側に小湾マーレ・グランデがあり、ラグーンとの境界をなす小さな島を中心として旧市街が形成された。島はかつては本土と陸続きであったが、1480年に運河によって分断され、1887年に橋で結ばれた。旧市街には大聖堂(12世紀再建)、アラゴンのフェルディナンド1世(ナポリ王)によって再建された城(1480)、サン・ドメーニコ・マッジョーレ教会(1302)などがあり、中世のおもかげが残されている。それに対して、東側本土には碁盤目状の道路を有する新市街、北側本土には工業地区が広がる。1861年のイタリア王国成立当時は人口2万8000の港町であったが、1883年の海軍工廠(こうしょう)建設と第一次世界大戦直前期における大造船所の設立によって、軍港・造船の町として発展した。1960年代になると南部開発政策の一環として、産業復興公社IRI(イリ)傘下の企業イタルシデルにより最新鋭の大製鉄所が建設され、それを契機にセメント、金属機械、化学などの関連諸工業も展開された。また漁業も重要で、マーレ・ピッコロではイガイとカキの養殖が盛んに行われている。
[堺 憲一]