日本大百科全書(ニッポニカ) 「チェスキー・クルムロフ」の意味・わかりやすい解説
チェスキー・クルムロフ
ちぇすきーくるむろふ
Český Krumlov
チェコのボヘミア地方南部、オーストリアとドイツとの国境近くの町。人口1万4600(2003推計)。13世紀以降、ロズンベルク家の巨大な封建領地の中心地として発展した。町全体がゴシック、ルネサンス、バロック様式の建築物が保存された貴重な歴史記念物であり、1992年に世界遺産の文化遺産として登録されている(世界文化遺産)。湾曲して流れるブルタバ川に囲まれた町の中心部には、ゴシック様式の聖ビート教会、バロック様式の聖ネポムツキー教会、15世紀から16世紀のルネサンス期の町並みが保存されている。左岸の城は、ボヘミアではプラハ城に次ぐ規模を誇り、ゴシック以降の諸様式をもつ建築物の集合体となっている。18世紀中ごろにシュバルツェンベルク家が領地を受け継いだ後、城には「仮面の間」などバロック様式の新しい要素が付け加えられた。国境が閉ざされていた冷戦期には辺境の町となり、歴史的建造物も放置されていたが、1989年以降大規模な修復が行われ、歴史遺産を生かした観光都市として注目を集めている。また、シュマバ山地(ボヘミアの森)への観光の基地ともなっている。
[中田瑞穂]