チオシアン酸カリウム(読み)ちおしあんさんかりうむ(その他表記)potassium thiocyanate

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チオシアン酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

チオシアン酸カリウム
ちおしあんさんかりうむ
potassium thiocyanate

チオシアン酸のカリウム塩。ロダンカリ、ロダン化カリウム、硫シアン化カリウムなどともいう。チオシアン酸アンモニウム水溶液に水酸化カリウムを加えて濃縮すると得られる。シアン化カリウムを硫黄(いおう)と混合して加熱し、水で抽出して結晶させる方法もある。潮解性の無色の結晶。水によく溶ける。アルコールアセトンなどにも溶ける。弱酸性溶液中で鉄(Ⅲ)イオンと作用して赤色を呈する。この発色には[Fe(SCN)63-イオンの生成が関与しているものと考えられる。この反応は鉄(Ⅲ)およびチオシアン酸イオンの検出に利用される。チオ尿素染料、医薬の製造原料となるほか、写真、織物染色および捺染(なっせん)などの補助剤に用いられる。水に溶解するとき吸熱するので寒剤にも使用される。血圧降下剤としての用途もある。

[鳥居泰男]


チオシアン酸カリウム(データノート)
ちおしあんさんかりうむでーたのーと

チオシアン酸カリウム
  KSCN
 式量   97.2
 融点   173℃
 沸点   ―
 比重   1.886
 結晶系  斜方
 屈折率  (n) 1.660
 溶解度  217g/100g(水20℃)
      20.8g/100g(アセトン22℃)
 分解温度 500℃

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「チオシアン酸カリウム」の解説

チオシアン酸カリウム
チオシアンサンカリウム
potassium thiocyanate

KSCN(97.18).チオシアン酸カリウムはIUPACが認める慣用名.付加方式体系名はニトリドスルフィド炭酸(1-)カリウム.ロダンカリウム,ロダン酸カリウム,チオシアン化カリウム,硫シアン化カリウム,硫青酸カリなど,多数の通俗名がある.工業的には,KCNと硫黄とを混合,加熱すると得られる.小規模には,等モル量のNH4SCNとKOHとを水溶液中で混合,加熱後,蒸発濃縮しても得られる.無色,潮解性の斜方晶系イオン結晶で,直線状のSCNをもつ.密度1.89 g cm-3(20 ℃).融点173 ℃.約500 ℃ で分解する.水に易溶,アセトンやエタノールに可溶.水溶液は Fe3+ で [Fe(SCN)6]3- の赤色を呈する.化学薬品(色素,合成樹脂など)の原料,分析試薬,寒剤,繊維の染色,写真処理薬剤,殺虫・殺菌剤などに用いられる.[CAS 333-20-0]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

百科事典マイペディア 「チオシアン酸カリウム」の意味・わかりやすい解説

チオシアン酸カリウム【チオシアンさんカリウム】

化学式はKSCN。比重1.886,融点172.3℃。無色潮解性の結晶。ロダンカリとも。500℃で分解,水,アセトン,アルコールに可溶。銀イオンなどの分析試薬,染料の合成,写真剤などに使用。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のチオシアン酸カリウムの言及

【チオシアン酸】より

…水溶液は強い一塩基酸となる。チオシアン酸カリウムに硫酸水素カリウムを作用させると得られる。塩類は安定で多くの種類が知られている。…

※「チオシアン酸カリウム」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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