チオシアン酸(読み)ちおしあんさん(英語表記)thiocyanic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「チオシアン酸」の意味・わかりやすい解説

チオシアン酸
ちおしあんさん
thiocyanic acid

シアン酸HOCNの硫黄置換体である。化学式HSCN。式量59.1。チオシアン酸水素HSCNおよびその水溶液をこのようによぶ。細粉にして乾燥したチオシアン酸カリウム硫酸水素カリウムを反応させ、発生する気体を冷却するとチオシアン酸水素が得られ、これを水に溶解するとチオシアン酸が得られる。俗称ロダン酸rhodanic acid、硫青酸。天然にはタマネギなどに遊離の酸として存在し、塩やエステルとしても広く存在する。チオシアン酸水素は融点-110℃の物質であるが、-90℃~-85℃で重合して無色の結晶性物質となっている。室温では分解して暗赤色となる。チオシアン酸とイソチオシアン酸HNCSの互変異性が可能で、気相や四塩化炭素溶液では後者が存在する。RSCNとRNCS(Rはアルキル基)のエステルが知られる。水にはよく溶け、強い一塩基酸。希薄水溶液は安定で、直線形のチオシアン酸イオンSCN-を生じている。チオシアン酸イオンは鉄(Ⅲ)イオンにより血赤色を呈し、確認試験に用いられる。チオシアン酸イオンが配位した金属錯体が多数知られている。カリウム塩はシアン化物を硫黄(いおう)と融解して得られる。銀塩は水に難溶。

[守永健一・中原勝儼]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チオシアン酸」の意味・わかりやすい解説

チオシアン酸
チオシアンさん
thiocyanic acid

化学式 HNCS 。ロダン化水素酸またはロダン酸ともいう。遊離酸として2種類の互変異性体 ( H-S-C≡N と H-N=C=S ) が可能であるが,気相中では H-N=C=S として存在する。融点-103℃ (融点5℃は後に訂正された) 。常温では無色,刺激臭のある気体ですみやかに分解する。希水溶液はその塩の水溶液を水素型陽イオン交換樹脂に通すと簡単に得られる。水に易溶。強酸で,その塩は三価鉄イオン Fe3+ と反応して赤色を示す。

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