シアン酸(読み)しあんさん(英語表記)cyanic acid

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアン酸」の意味・わかりやすい解説

シアン酸
しあんさん
cyanic acid

炭素オキソ酸の一つ。固体シアヌル酸(NCOH)3を加熱し、蒸気を冷やすと、不安定で重合しやすいシアン酸液体が得られる。気体では主として異性体のイソシアン酸HNCOとして存在する。かなり強い酸(電離定数1.2×10-4、0℃)であり、水溶液はアンモニア二酸化炭素を生じて分解する。アセトンエーテルベンゼンクロロホルムに溶ける。エーテル溶液中ではイソシアン酸として存在する。きわめて不安定で0℃でも重合してシアメリドC3H3N3O3となる。アルカリ金属のシアン酸塩は安定で、シアン化物を酸化鉛(Ⅱ)と加熱酸化して得られる。しかし、水溶液は不安定で、炭酸塩とアンモニアに分解する。シアン酸アンモニウムNH4OCNの水溶液を蒸発すると尿素を生じる。シアン酸イオンOCN-は直線形。シアン酸の異性体に雷酸HONCもある。

[守永健一・中原勝儼]


シアン酸(データノート)
しあんさんでーたのーと

シアン酸
  HOCN
イソシアン酸
  HNCO
 式量 43.0
 融点 -86.8℃
 沸点 23.5℃
 比重 液体,1.140(測定温度0℃)

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シアン酸」の意味・わかりやすい解説

シアン酸
シアンさん
cyanic acid

化学式 HOCN 。無色の液体または気体。融点-86℃,沸点 23.5℃。急激に加熱すると爆発し,放置すると重合してシアメリドとシアヌル酸になる。水には微溶で,アンモニアと二酸化炭素に分解する。

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