日本大百科全書(ニッポニカ) 「シアン酸」の意味・わかりやすい解説
シアン酸
しあんさん
cyanic acid
炭素のオキソ酸の一つ。固体のシアヌル酸(NCOH)3を加熱し、蒸気を冷やすと、不安定で重合しやすいシアン酸の液体が得られる。気体では主として異性体のイソシアン酸HNCOとして存在する。かなり強い酸(電離定数1.2×10-4、0℃)であり、水溶液はアンモニア、二酸化炭素を生じて分解する。アセトン、エーテル、ベンゼン、クロロホルムに溶ける。エーテル溶液中ではイソシアン酸として存在する。きわめて不安定で0℃でも重合してシアメリドC3H3N3O3となる。アルカリ金属のシアン酸塩は安定で、シアン化物を酸化鉛(Ⅱ)と加熱酸化して得られる。しかし、水溶液は不安定で、炭酸塩とアンモニアに分解する。シアン酸アンモニウムNH4OCNの水溶液を蒸発すると尿素を生じる。シアン酸イオンOCN-は直線形。シアン酸の異性体に雷酸HONCもある。
[守永健一・中原勝儼]