日本大百科全書(ニッポニカ) 「チマローザ」の意味・わかりやすい解説
チマローザ
ちまろーざ
Domenico Cimarosa
(1749―1801)
イタリアの作曲家。ナポリ近郊のアベルサに生まれる。ナポリの音楽院で学び、1772年オペラ作曲家としてデビュー、パイジェッロと人気を二分するナポリ楽派オペラの代表者として活躍。87~91年ペテルブルグ、92~93年ウィーンの宮廷楽長を経て、96年よりナポリの宮廷楽長を務めたが、99年の市民蜂起(ほうき)の際に共和制への賛歌を作曲したため、革命の失敗後死刑を宣告された。友人の嘆願で追放処分に減刑されたが、ベネチアで急死したため、当時ナポリ当局による毒殺が噂(うわさ)された。70曲近いオペラの大半は、優美な旋律と軽妙な劇的感覚にあふれるオペラ・ブッファ(喜劇的オペラ)で、代表作『秘密の結婚』(1792・ウィーン初演)は18世紀後半の傑作オペラに数えられ、今日も上演機会が多い。ほかに、出演歌手が1人だけの『宮廷楽士長』(作曲年不明)、イタリア旅行中のゲーテが絶賛した『困った興業師』(1786)、陰影に富む『レクイエム・ト短調』(1787)などが知られる。
[大久保一]