チャイルド(読み)ちゃいるど(英語表記)Sir Josiah Child

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チャイルド」の意味・わかりやすい解説

チャイルド
Child, Charles Manning

[生]1869.2.2. ミシガンイプシランティ
[没]1954.12.19. カリフォルニア,パロアルト
アメリカの動物学者。シカゴ大学で研究 (1895~1934) 。 1916年以後は同大学教授。ナミウズムシ (プラナリア) やヒドラは,これを細かく刻んでも,それぞれの組織片から個体の再生してくることが知られていたが,彼は再生に方向性のあること,すなわち,組織片の両端のうちで頭部に近かったほうの端から頭が,尾部寄りの側の端より尾が再生することを見つけた。この観察事実を説明するために,個体の軸に沿って頭から尾に向うある種の勾配が存在すると仮定し,個体を小片に切分けても個々の組織片の中でこの勾配は保存され,器官の分化する位置を決定するという理論を発表。勾配の実体として,チャイルドは化学物質の濃度勾配を考えていた。今日,これは生理勾配の名で呼ばれ,発生学における基本概念の一つになっている。 30~31年ロックフェラー派遣教授として来日,東北大学で講義を行なった。

チャイルド
Child, Sir Josiah

[生]1630. ロンドン
[没]1699.6.22. ロンドン?
イギリスの商人,経済学者。清教徒革命による共和国時代に海軍御用商人として財をなし,イギリス東インド会社大株主となり,同社に入り理事 (1677) ,副総裁を経て,1681年総裁。専制的手腕で同社の実権を握った。一方,『貿易および貨幣利子論』 Brief Observations Concerning Trade and the Interest of Money (68) ,『新貿易論』A New Discourse of Trade (90) で重商主義を説いた。

チャイルド
Child, Lydia Maria

[生]1802.2.11. マサチューセッツメドフォード
[没]1880.10.20. マサチューセッツ,ウェーランド
アメリカの女流作家,社会改革家。旧姓 Francis。長編『ホボモク』 Hobomok (1824) などの歴史小説のほか,1826年アメリカで最初の児童向け月刊誌『児童雑誌』 Juvenile Miscellanyを創刊。また奴隷制反対の『アフリカ人といわれるアメリカ人のためのアピール』 An Appeal in Favor of That Class of Americans Called Africans (33) は大きな反響を呼んだ。ほかに女性問題を扱った論文がある。

チャイルド
Childe, Vere Gordon

[生]1892.4.14. シドニー
[没]1957.10.9. マウントビクトリア
オーストラリア考古学者。エディンバラ大学先史考古学教授 (1927~46) ,ロンドン大学考古学研究所所長を歴任。農耕の起源,都市の発生などについて独特の史観完成。主著『ヨーロッパ文明の夜明け』 The Dawn of the European Civilization (25) ,『人間はみずからを作った』 Man Makes Himself (36) ,『歴史に何が起ったか』 What Happend in History (42) 。

チャイルド
Child, Francis James

[生]1825.2.1. ボストン
[没]1896.9.11. ボストン
アメリカの英文学者,教育家。 1846年ハーバード大学卒業。主著『イングランドおよびスコットランドにおける民謡集成』 The English and Scottish Popular Ballads (5巻,1883~98) のほか,チョーサー研究でも著名。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャイルド」の意味・わかりやすい解説

チャイルド(Sir Josiah Child)
ちゃいるど
Sir Josiah Child
(1630―1699)

イギリスの貿易商人、重商主義期の経済論者。東インド会社の重役として同社の利益擁護に活躍し、貿易と産業の自由を一部主張したが、それは特権的貿易会社の利益を基盤とするもので、いわゆるトーリー・フリー・トレーダーの自由貿易論であった。主著『新交易論』A New Discourse of Trade(1693)で、彼はT・マンと同様、一国の富と偉大さとを外国貿易に求め、一般的貿易差額論を承認するが、貿易差額算定上の困難や、為替(かわせ)相場による測定の不確実さを指摘し、貿易差額にかわる富裕の算定基準を貿易と海運の増減に求めるべきだと主張した。さらにこの富裕増大の最大原因を低利子率に求め、最高法定利子率の引下げ論を展開した。

[田中敏弘]


チャイルド(Vere Gordon Childe)
ちゃいるど
Vere Gordon Childe
(1892―1957)

イギリスの考古学者。オーストラリア、シドニー出身。オックスフォード大学卒業後、王立人類学研究所司書となり(1925~27)、1925年に刊行した『ヨーロッパ文明のあけぼの』は学界に大きな衝撃を与えた。本書の内容は彼の学説の基幹となるもので、それは、生産経済はオリエントで始まり、ヨーロッパ、アジアに波及して各地に生産経済に基づく文化を形成させたとするものである。27年にエジンバラ大学教授、45年にはロンドン大学教授となった。ヨーロッパ諸国、近東諸国、ロシアなどに精力的に研究旅行し、ヨーロッパ遠古の文化の再構成を企て、精力的に著作を刊行した。退官後故郷のオーストラリアで事故死した。著書に『考古学とは何か』『アジア文明の起源』『歴史のあけぼの』などがある。

[寺島孝一]

『近藤義郎・木村祀子訳『考古学とは何か』(岩波新書)』

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