ポーツマス(読み)ぽーつます(英語表記)Portsmouth

翻訳|Portsmouth

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポーツマス」の意味・わかりやすい解説

ポーツマス
Portsmouth

イギリスイングランド南部の都市。単一自治体(ユニタリー unitary authority)。1997年にハンプシャー県から分離して単一自治体となった。ロンドンの南西約 100km,イギリス海峡沿岸の港湾都市で,ワイト島とイギリス本土を隔てるソーレント水道に面する。中心市街は,ソーレント水道に向かって開口する西のポーツマス港と東のラングストン港に挟まれたポートシー島にあるが,市域は島を本土から分ける狭い水路を越えて北の本土に及んでいる。1194年,島の戦略的重要性に着目したリチャード1世がここに町を建設し,勅許状を与えた。その後海軍基地となり,1496年には海軍造船所が開設され,軍港として急速に発展。第2次世界大戦時には空爆により大きな被害を受けたが,戦後復興し,イギリスの主要軍港となった。造船所を含む海軍諸施設は壺型のポーツマス港に面した島の西岸にある。またソーレント水道に面した南岸のサウスシー一帯は,海岸に沿って遊歩道,広い草地,公園,スポーツ施設などがあり,海浜保養地として知られる。ドックの一角にはトラファルガルの戦いにおけるホレーショ・ネルソン提督の旗艦『ビクトリー』号が保存されており,その近くにはネルソンの遺品を収蔵するビクトリー博物館などもあって訪れる観光客が多い。軍港のほか,商港,ヨーロッパ大陸と結ぶフェリー港があり,航空機工業や各種軽工業も立地する。チャールズ・ジョン・ハファム・ディケンズ,ジョージ・メレディスの生地。面積 40km2。人口 18万9600(2005推計)。

ポーツマス
Portsmouth

アメリカ合衆国,ニューハンプシャー州南東部の港湾都市。 1623年入植,同州最古の入植地。州で最古の新聞,『ニューハンプシャー・ガゼット』が 1756年に発刊された。 18世紀には造船業が主産業となり,1790年代には軍艦の建造,修理を中心に軍港として栄えた。軍港はシービー島にあるが,一般にはポーツマス港と称される。 1905年日露戦争終結の際,ポーツマス条約が調印された地。海軍関連工業のほか,機械,製靴,製紙などの工業が盛ん。ニューファンドランド近海の漁場を控え,漁港としても有名。人口2万 5925 (1990) 。

ポーツマス
Portsmouth

アメリカ合衆国,バージニア州南東部の港湾都市。ハンプトンローズ港に面し,エリザベス川をはさんで,ノーフォークに対する。 1752年から入植を開始。 67年に造船所,そして 1801年ノーフォーク軍港が建設され,南北戦争のおり南軍の装甲艦『バージニア』が建造された。現在は造船,車両工業が盛んで,ほかに化学,プラスチック,肥料,機械器具工業もある。ノーフォーク,ニューポートニューズなどと連接して大都市圏を形成。人口 10万 3907 (1990) 。

ポーツマス
Portsmouth

アメリカ合衆国,オハイオ州南部にある都市。シオト川が合流する地点オハイオ川河岸にあり,対岸はケンタッキー州のフラートンである。 1803年に創設,30年にオハイオ=エリー運河が開通してから,運河と河川との間の貨物の積替え場所として栄え,汽船時代が終ってからは,鉄道輸送の中心地になった。石材の産地で,その砂岩はオタワにあるカナダ国会議事堂に使われている。オハイオ大学分校がある。人口2万 2676 (1990) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポーツマス」の意味・わかりやすい解説

ポーツマス(イギリス)
ぽーつます
Portsmouth

イギリス、イングランド南海岸のほぼ中央にあるユニタリー・オーソリティー(一層制地方自治体)で、イギリス最大の軍港都市。人口18万6704(2001)。ロンドンの南西約100キロメートルにあり、イギリス海峡に面する天然の良港に恵まれている。後背地であるハンプシャー盆地の農業地帯との交通の便もよく、農産物の取引も盛ん。鉄道の電化後は海岸保養地としても発展した。現在の町はポーツマス、ポートシー、ランドポート、サウスシーの4集落が発展して形成されたが、各地区はいまも軍港・ドック、行政中心、労働者居住地、観光・保養などの諸機能を分担している。第二次世界大戦後、新たに軽工業なども加わって戦災から復興した。市内には12世紀に建てられた教会をはじめ美しい建物が多く残る。作家C・ディケンズの生地。

[井内 昇]

歴史

11世紀にノルマン人が来寇(らいこう)したころにはすでに小さな町であったが、中世には貿易港としても国防上からもとりたてて注目すべき港ではなかった。しかし、この地が重要な海軍基地となりうる絶好の条件を備えていることを見抜いたヘンリー8世が、1540年造船所を設けて以来、イギリス第一の軍港として発達した。1628年にはかつてのジェームズ1世の寵臣(ちょうしん)バッキンガム公が、フランス遠征のため当市にきて暗殺された。軍港として数多くの海軍の栄光と結び付いており、その典型として、トラファルガーの海戦のネルソンの旗艦ビクトリー号が保存され、公開されている。第二次世界大戦中はドイツ軍の空襲によって甚大な被害を被ったが、1944年の連合軍のヨーロッパ大陸への反攻上陸作戦当時は、当市近郊に総司令官アイゼンハワーの司令部が設置され、彼はそこからノルマンディー上陸作戦を指揮した。最近では、1982年のフォークランド紛争の際、当市から艦隊や輸送船が出航した。

[松村 赳]


ポーツマス(アメリカ合衆国、ニュー・ハンプシャー州)
ぽーつます
Portsmouth

アメリカ合衆国、ニュー・ハンプシャー州南東部、大西洋岸の都市。人口2万0784(2000)。良港を有する海港都市として知られており、潜水艦の建造で有名な海軍工廠(こうしょう)もある。そのほか、電気製品、プラスチック、ボタン、靴など多種工業が発達する。夏季リゾート地として多くの行楽客を集め、数多く残されている植民地時代の古い建造物も人気をよんでいる。1624年に町が開かれ、1849年より市制が施行された。1905年(明治38)には、この地で日露戦争の講和条約(ポーツマス条約)が締結されている。

[作野和世]


ポーツマス(アメリカ合衆国、オハイオ州)
ぽーつます
Portsmouth

アメリカ合衆国、オハイオ州南部、オハイオ川に臨む工業都市。人口2万0909(2000)。19世紀後半におこった鉄鋼を中核に、化学、プラスチック、製靴など多種工業が発達し、鉄道輸送の中心地でもある。1803年に町が建設され、32年にクリーブランドと結ぶオハイオ運河が開通したことや付近に鉄鉱石が発見されたことで、急速な工業発達がおこった。周辺にはルーズベルト鳥獣保護区、ショーニー州有林、マウンド・パークなどレクリエーション地が多く、市民に親しまれている。

[作野和世]


ポーツマス(アメリカ合衆国、バージニア州)
ぽーつます
Portsmouth

アメリカ合衆国、バージニア州南東部、ノーフォーク郡の郡都。人口10万0565(2000)。チェサピーク湾の湾口に近く、エリザベス川を挟んだ対岸がノーフォークである。古くからの軍港で、海軍の弾薬庫、第五沿岸警備隊本部がある。また、商港でもあり、鉄道交通の要所である。1752年に集落ができ、1858年に町となった。

[菅野峰明]

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