日本大百科全書(ニッポニカ) 「チャタテムシ」の意味・わかりやすい解説
チャタテムシ
ちゃたてむし / 茶点虫
psocid
昆虫綱チャタテムシ目Psocopteraの昆虫の総称。チャタテムシ目は噛虫類(ごうちゅうるい)(目)ともいう。不完全変態昆虫の一グループで、体長10ミリメートル以下、1.5ミリメートルぐらいまでの小さい軟弱な虫。世界各地に分布し、1000種以上が知られている。
体色は淡黄色のものから褐色や黒色のものまであり、赤色のものもまれにある。頭部前面の額後片が発達し、比較的小さい複眼は左右に広く離れ、その間に普通3個の単眼をもつ。口器はかむ型。触角は糸状で、体より長いのが普通である。前胸は小さく、中・後胸はよく発達している。はねは膜質で薄く、単純だが特徴ある翅脈(しみゃく)をもつ。はねに鱗片(りんぺん)を備えるものもある。後翅は前翅よりやや短い。また、一部の種類では、はねが退化したり、雌だけに退化したはねがあったり、世代によって、はねが退化するものもある。脚(あし)はいずれも細長く、跗節(ふせつ)は2、3節である。
この昆虫は普通、樹幹、樹枝、枯れ枝、葉裏、花中、岩上、鳥の巣などに好んですみ、しばしば群集していることもある。また、夜間灯火にくるものもある。食菌性または食藻性で、一部のものは家屋内にすみ、乾燥食品、書籍、動植物の標本などに取りつき、軟らかい部分を食害する。コチャタテTrogium pulsatoriumやカツブシチャタテLiposcelis entomophilusなどはこの屋内生息種で、はねが消失したり退化している特殊化した種である。どちらも世界共通種で、英語でbook liceとかdust liceとよばれる。スカシチャタテHemipsocus chloroticusのように屋内の障子などに止まり、シャシャシャと小さな音をたてる種は古くからよく知られ、その音が茶の湯の茶を点(た)てるときの音に似ているというところから、チャタテの名があるが、アズキアライ(小豆洗い)とか、ナキザミ(菜刻み)などと小妖怪(ようかい)に見立てた呼び方もあった。日本では約50種が知られ、前記の種のほか、大形種のオオチャタテPsococerastis nubilaが代表種である。
[山崎柄根]