改訂新版 世界大百科事典 「チャルメルソウ」の意味・わかりやすい解説
チャルメルソウ
Mitella furusei Ohwi var.subramosa Wakabayashi
山の湿った陰地や渓流の縁などに生えるユキノシタ科の多年草。蒴果(さくか)は上部が裂けてらっぱ状に開き,このようすが楽器のチャルメラに似ていることによって和名がつけられた。根茎はやや太く,地中から斜上し,その先に密に互生した長い柄をもつ根生葉をつける。葉身は広卵形で縁は不規則に浅裂し,表面濃緑色,しばしば白っぽい斑紋があり,裏面は淡緑色でやや赤みを帯びる。早春,腺毛を密生した花茎を出して,小さな花を総状につける。萼には腺毛が密生し,萼筒は倒円錐形~杯形,5枚の萼裂片は開花時に直立する。花弁は5枚,羽状に3~5裂し,裂片は線形で,腺点を密につけ,赤みを帯びる。おしべは5本,花糸は短く,花弁と対生した位置に配列し,その基部に接してつく。子房は下位,2心皮からなり,側膜胎座に多数の胚珠をつける。種子は長楕円形で,長さ約1.3mm,茶褐色を帯び,縦に微少な凹凸のすじがある。本州の近畿地方以西,九州北部に分布する。よく似たミカワチャルメルソウvar.furuseiは花弁の分裂程度が大きく,羽状に7~11裂し,本州の中部(長野県,愛知県,岐阜県)に分布している。
チャルメルソウ属Mitellaはズダヤクシャ属Tiarellaなどに近縁な植物で,約20種が主として東アジアと北アメリカに自生している。日本にはその約半数の11種を産し,そのほとんどは日本の特産種である。
執筆者:若林 三千男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報