改訂新版 世界大百科事典 「チョウセンアサガオ」の意味・わかりやすい解説
チョウセンアサガオ
Hindu datula
Datura metel L.
熱帯アジア原産のナス科の一年草。中国名は曼陀羅華(まんだらげ)。江戸時代に輸入され薬用のために栽培されたが,現在はほとんど見られない。最近では熱帯アメリカ原産の近似種ヨウシュチョウセンアサガオD.stramonium L.(英名thorn apple,Jimson weed,stramonium)が広く栽培され,また荒地に野生化している。両者とも茎は高さ約1m,葉は互生または偽対生し,長さ8~15cm,花は葉腋(ようえき)に単生し,花冠は漏斗状で長い筒部がある。花はチョウセンアサガオは白色,ヨウシュチョウセンアサガオは淡紫色または白色(これをシロバナヨウシュチョウセンアサガオという)。花期は夏~秋。果実は前者は球形,後者は広卵形でともに多数のとげがある。チョウセンアサガオは,華岡青洲が日本で初めて乳癌の手術をしたときの麻酔に使ったことで有名である。
チョウセンアサガオ属Daturaは10種を含み,大部分が熱帯アメリカに分布する。アメリカチョウセンアサガオD.meteloides Dunal.は北アメリカ原産で,観賞用に広く栽培され,しばしば野生化している。前記2種に比べて花冠はずっと大輪で,開くと径10cm以上になる。
執筆者:矢原 徹一 キダチチョウセンアサガオD.suaveolens Humb.et Bonpl.(英名angel's-trumpet)は常緑低木で,高さ3~4mあり大きい。ほとんど無毛。花は長さ20~30cmで下を向いて咲き,芳香がある。萼は筒状で15cmくらいで,先端は5浅裂する。原産地は中南米。暖地では野外で育つ。コダチチョウセンアサガオD.arborea L.(英名angel's-trumpet)は前種に似るが短軟毛があり,萼筒は中央まで裂ける。いずれも観賞用に栽植される。
執筆者:古里 和夫
薬用
ヨウシュチョウセンアサガオの葉を,生薬ではダツラ葉あるいはマンダラ葉(ともに英名はstramonium)という。葉と種子にアルカロイドのヒヨスチアミンhyoscyamineを含み,鎮痛,鎮痙(ちんけい),鎮咳(ちんがい)薬とし,またアルカロイド抽出原料とする。チョウセンアサガオやD.inoxia Mill.の花を洋金花(ようきんか),種子を曼陀羅子(まんだらし)という。ヒヨスチアミンのほかにスコポラミンscopolamineを含む。花は麻酔作用が強く,中医方で他の生薬と配合して筋肉注射による外科手術用全身麻酔剤とし,また胃痛,リウマチ性関節痛に用いられる。種子も同様に鎮静止痛に用いられる。花は単独で喘息(ぜんそく)の発作を軽減する目的に使われる。
執筆者:新田 あや
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報