日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョウセンアサガオ」の意味・わかりやすい解説
チョウセンアサガオ
ちょうせんあさがお / 朝鮮朝顔
[学] Datura metel L.
ナス科(APG分類:ナス科)の多年草で、熱帯では低木状となるが、日本で栽培すると一年草となる。原産は熱帯アジア(インド)。日本には江戸時代に伝えられ、栽培もされたが、栽培がむずかしいうえに、薬用としての収量の面でも採算があわず、今日ではほとんどみられない。茎は直立し、高さ約1メートル、多くの淡緑色の枝に分かれる。葉は互生だが対生状にもなり、広卵形で全縁または深い波状の少数の鋸歯(きょし)をもつ。葉柄は長い。夏から秋にかけて、葉腋(ようえき)に1個ずつ花をつける。萼(がく)は筒状で長く、先端は5裂する。花冠は白色または淡紫色の大きな漏斗(ろうと)状で、長さ10~15センチメートル、筒部は細長く、裂片の先は尾状にとがる。雄しべは5個、雌しべは1個。果実は球形の蒴果(さくか)で、径約2.5センチメートル、表面には太くて短い刺(とげ)が多い。短い果柄は、曲がって果実を下垂させるという特徴をもつ。果実は成熟すると先端が不規則に割れ、中には多数の扁平(へんぺい)で灰褐色の種子がある。チョウセンアサガオは、全株にアルカロイドのスコポラミンを含有しているため、葉と種子は鎮痛、鎮けい、鎮咳(ちんがい)剤として胃痛、喘息(ぜんそく)などの治療に用いられる。ただし、分量を誤ると狂躁(きょうそう)状態となり、それが数日間も続くことがあるため、かつてはキチガイナスビともよばれた。なお、和名のチョウセンとは外国の意であり、アサガオはその花形による。またマンダラゲ(曼陀羅華)の異名もある。漢名は洋金花。
チョウセンアサガオに類似の種として、ヨウシュチョウセンアサガオD. stramonium L.(D. tatula L.)がある。ヨウシュチョウセンアサガオは熱帯アメリカ原産で、日本へは1879年(明治12)に渡来した。茎と葉柄は紫色を帯び、果実は長さ約3センチメートルの卵形で、直立する。成熟した果実は、上部が深く4裂すること、種子の色が黒褐色であることで、チョウセンアサガオとは区別できる。花は白色で、茎と葉柄は緑色。果実の刺の数は少ないが、大小の目だつものをシロバナヨウシュチョウセンアサガオといい、現在ではこの種類が世界各地で野生化している。ヨウシュとは洋種、すなわち外国産という意味である。この両種のアルカロイドはヒヨスチアミン(アトロピン)で、薬効はチョウセンアサガオと同じである。
[長沢元夫 2021年6月21日]