麻酔薬(読み)ますいやく(英語表記)anesthetics

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

麻酔薬
ますいやく
anesthetics

麻酔剤。麻酔のために用いる医薬で,全身麻酔薬局所麻酔薬とがある。全身麻酔薬は,全身の痛覚を鈍麻または消失させ,意識を喪失させるための薬物で,中枢神経に作用し,その機能を可逆的に,また一時的に抑制する。投与法により,吸入麻酔薬 (ハロタン,笑気など) ,静脈麻酔薬 (チオペンタールなど) ,直腸麻酔薬 (トリブロムエタノールなど) に大別される。局所麻酔薬は,大脳皮質に作用しないで感覚を局所的に鈍麻または消失させる薬物である。浸潤麻酔に用いられるプロカインリドカイン,ディブカイン (ヌペルカイン) などは,皮下注射により,注入局所に無痛域を得られるだけでなく,末梢神経の刺激伝導を可逆的に遮断し,その神経の支配域を無痛にすることができる。鼻咽頭の粘膜を麻酔する表面麻酔には,コカイン,リドカイン,テトラカインが用いられる。

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百科事典マイペディアの解説

麻酔薬【ますいやく】

麻酔に使用する薬剤。中枢神経系の機能を抑制する全身麻酔薬には,エチルエーテルクロロホルム,ハロタン,笑気(亜酸化窒素)等の吸入麻酔薬,短時間の小手術に用いるヘキソバルビタール,チオペンタール等の静脈麻酔薬などがあり,効果増大や副作用軽減のため併用もされる。末梢知覚神経を麻痺(まひ)させ,局所の痛覚を鈍麻・消失させる局所麻酔薬には,プロカイン,キシロカイン,カルボカイン等がある。

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大辞林 第三版の解説

ますいやく【麻酔薬】

麻酔に用いる薬剤。中枢神経系や知覚神経に作用して機能を抑制し、知覚を鈍麻または消失させる薬。眠り薬。麻酔剤。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

麻酔薬
ますいやく
anesthetic

麻酔剤。麻酔に用いられる薬剤で、その使用目的により全身麻酔剤と局所麻酔剤に分けられるが、一般的に麻酔剤といえば全身麻酔剤をさす。
 全身麻酔剤は中枢神経系に働いてその機能を抑制することにより意識を消失させ、全身の知覚を鈍麻または消失させる。投与ルートから吸入麻酔剤、静脈麻酔剤、直腸麻酔剤の3種に分けられるが、手術時の麻酔には吸入麻酔剤がもっとも多く用いられる。
 吸入麻酔剤は常温においては揮発性液体または気体(ガス体)で、呼吸器よりの吸入によって麻酔作用を現す薬物をいう。古くはエーテル、クロロホルムが用いられたが、現在では亜酸化窒素(笑気ガス)、ハロタン(フローセン)、エンフルラン(エトレン)が用いられ、そのうち笑気ガスがもっとも多く使用されている。笑気ガスは通常、酸素と混合して用いられる。
 静脈麻酔剤であるバルビツール酸系の薬剤は作用が強力で、発現の早い超短時間型のバルビツール酸化合物であるチオペンタールナトリウム(ラボナール)、サイアミラールナトリウム(イソゾール、チトゾール)が全身麻酔およびその導入に用いられ、アモバルビタールナトリウム、ペントバルビタールナトリウムは基礎麻酔、誘導麻酔、および麻酔前投与薬として投与される。そのほか、プロパニジド、塩酸ケタミン、アルテシンなどは小手術や導入麻酔に応用される。なお、直腸麻酔剤としてはチオペンタールがわずかに用いられるにすぎない。
 局所麻酔剤は末梢(まっしょう)における神経線維の伝達を遮断するもので、限局された部位の知覚神経を麻痺(まひ)させ、疼痛(とうつう)を緩和させる。局所麻酔には表面麻酔、浸潤麻酔、伝達麻酔(神経ブロック)、硬膜外麻酔、脊髄(せきずい)麻酔があり、これらの局所麻酔に用いられる薬剤には塩酸コカイン、塩酸プロカイン、リドカイン、テトラカイン、テーカイン、ジブカイン、オキシプロカイン(ベノキシール)、メピバカイン(カルボカイン)、プロピトカイン、ブピバカインなどがあり、これらは注射剤として用いられている。なお、虫垂炎の手術には腰椎(ようつい)麻酔としてプロカイン、リドカイン、ジブカインがよく用いられる。[幸保文治]

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精選版 日本国語大辞典の解説

ますい‐やく【麻酔薬】

〘名〙 中枢神経の機能を抑制し、意識の喪失を起こす薬剤。全身麻酔および局所麻酔に用いる。吸入麻酔薬、静脈麻酔薬、直腸麻酔薬がある。麻酔剤。〔医語類聚(1872)〕

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世界大百科事典内の麻酔薬の言及

【麻酔】より

…全身麻酔は通常意識消失を伴う。麻酔作用を有する薬を麻酔薬anestheticsと呼ぶが,通常,単に麻酔薬といえば全身麻酔薬をさし,局所麻酔薬とは区別されている。麻酔の目的は痛みを取り除くことのほかに,手術の侵害によって起こる患者の反応を調節するとともに,手術が安全に行われるように管理することがある。…

※「麻酔薬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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