ツカツクリ

改訂新版 世界大百科事典 「ツカツクリ」の意味・わかりやすい解説

ツカツクリ (塚造)

キジ目ツカツクリ科Megapodiidaeに属する鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。ツカツクリ科には7属12種が含まれ,すべて地上性の鳥である。体長が25~80cmあり,どの種もずんぐりした体つきで,脚は長くてじょうぶである。頭部が小さく,あるものでは頭部に羽毛がなく裸出していて,羽毛は雌雄同色である。オーストラリア,ニューギニア,南太平洋の島々,フィリピン,インドネシアニコバル諸島留鳥として分布する。卵を地面に掘った穴,砂や火山灰植物堆積の中などに産みつけ,太陽熱や発酵熱孵化(ふか)させる。

 ツカツクリMegapodius freycinetは体長が35~40cmで,よく発達した脚をもっている。羽色は頭部は灰色,顔とのどは裸出して赤色,体の下面は褐色で,背は黒褐色のじみな羽色をしている。ニューギニア,オーストラリア北部,ポリネシア,フィリピン,インドネシア,ニコバル諸島に分布し,つがい,あるいは小群で生活している。この鳥は自分の体温で卵を暖めないという奇妙な習性をもっており,巨大な塚と呼ばれる巣をつくる。それは地面に掘った穴の中に,木の葉や小枝,木くずなどを堆積してつくられる。塚の形はほぼ円錐形で,直径12m,高さ5mもある巨大なものも記録されている。塚の上部に斜めに掘られたトンネルの奥に産室があり,産室の温度は植物が発酵して生ずる熱で36℃くらいになる。1腹の卵数は6~8個で,雌は数日おきに産卵する。卵がかえるまでの日数は長く,40~50日もかかる。雛は孵化後,自力で土を掘って外へ出て,独立して生活する。
執筆者:


出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツカツクリ」の意味・わかりやすい解説

ツカツクリ
Megapodiidae; megapodes

キジ目ツカツクリ科の鳥の総称。全長 30~76cm。シチメンチョウを小型にしたような体つきをした地上性の鳥で,脚が大きくて強い。羽色は暗褐色や黒色のものが多い。卵は穴を掘って中に埋め,体温ではなく火山の地熱や太陽など自然の熱を利用して温める。枯れ葉や枝を盛り上げて土で覆う大きな塚のようなものをつくり,その中に穴を掘って卵を埋める種もある。卵は葉が腐食するときに出る熱で温められる。孵化したは葉や砂などをかきわけてはい出るとすぐに独立し,飛ぶこともできる。密林にすみ,雑食性である。マリアナツカツクリ Megapodius laperouse,クサムラツカツクリ Leipoa ocellata,ヤブツカツクリ Alectura lathami などが知られており,オーストラリア,ニューギニア,インドネシア,太平洋の熱帯の諸島に分布している。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツカツクリ」の意味・わかりやすい解説

ツカツクリ
つかつくり / 塚造
megapode

鳥綱キジ目ツカツクリ科に属する鳥の総称。この科Megapodiidaeの鳥は、オーストラリア、ニューギニア島、ボルネオ島、セレベス島、および南西太平洋の島々に分布し、12種がある。全長50~75センチメートル、全体に褐色や黒のじみな羽色をしている。この類の最大の特徴は、卵を自分で温めないことで、落ち葉や砂や火山灰の中に産み込み、それらがもつ熱で卵をかえすのである。もっとも手がこんでいるのはオーストラリアツカツクリLeipoa ocellataで、この鳥は、自分で掘った穴の中に落ち葉を埋め込み、その上のへこみに卵を産んだのち、さらに上に砂を厚くかぶせて大きな塚をつくる。卵は落ち葉の発酵熱で温められるが、塚内を33℃の一定温度に保っておくために、おもに雄が砂を取り除いたり、ふたたびかぶせたりする。この仕事を行うために、雄は毎日のようにこの塚を訪れてそばについている。この類の鳥は、明るい林から熱帯林にまですみ、キジ類のように地上を歩きながら昆虫やミミズや草の種子などをとって食べる。

[樋口広芳]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「ツカツクリ」の意味・わかりやすい解説

ツカツクリ

ツカツクリ科の鳥の総称。7属12種。ハトくらいのものからニワトリ大のものまである。一般に雌雄同色で,脚は大きくて強い。オーストラリアやニューギニア,熱帯太平洋の諸島に分布し,森林ややぶなどにすむ。雄が落葉と土を積み重ねて大きな塚を作り,その上に雌が卵を埋めて太陽熱や発酵熱により孵化(ふか)させる。卵は鳥の体に比べて非常に大きい。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典(旧版)内のツカツクリの言及

【鳥類】より

…多くの爬虫類と同様に,鳥類は卵生で,胎生のものはいない。しかし,保育行動がよく発達していて,産んだ卵をそのまま放置するものはなく,程度の違いはあっても,親鳥は抱卵し(孵化(ふか)に発酵熱を利用するツカツクリ類も卵の温度調節をする),孵化した雛の世話をし,卵や雛を外敵から守る。したがって,卵生である点では爬虫類に近いが,少数の子どもを確実に成育させる方向に進化している点では,むしろ哺乳類に近いといえる。…

※「ツカツクリ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android