改訂新版 世界大百科事典 「ツキヒガイ」の意味・わかりやすい解説
ツキヒガイ (月日貝)
saucer scallop
Amusium japonicum
イタヤガイ科の二枚貝。sun and moon shellは和製英語であるが使われる。殻の長さ,高さとも11cm,幅2cmに達する。円形で膨らみは弱く,平滑で光沢がある。右殻は淡黄白色,左殻は赤色で,これを月と太陽に見たててこの名がある。殻頂の両側に小さい耳状突起があり,上縁はまっすぐ。内面は白色で周囲は黄色。45~52本の対になった細い肋が放射状に出る。軟体は黄みを帯び,外套(がいとう)膜の縁には多くの赤褐色の糸状触手があり,その間に外套眼がある。体の中央部に大きく丸い後閉殻筋(貝柱)があり,これで殻を激しく開閉し水を噴射してその反動で泳ぎ移動する。房総半島から九州に分布し,水深10~100mの細砂底にすむ。プランクトンや浮遊有機物を食べる。肉は食用として美味,殻は貝細工に用いる。沖縄,台湾にすむ個体は左殻の赤色が成長脈に沿って縞状になっており,タイワンツキヒガイA.j.formosumという。また,沖縄,台湾や熱帯太平洋には小型の近似種タカサゴツキヒガイA.pleuronectesが分布する。
執筆者:波部 忠重
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報