翻訳|homonym
同音異義語ともいう。英語のsonとsunはともに発音は[sʌn]であるが,異なる意味をあらわしている。これが同音異義語である。この2語は古英語ではsonはsunu,sunはsunne,sunnaで,発音上明らかに違った形であったが,音変化の結果同音語になってしまった。一般に常に変化の可能性にさらされている言語は,このような同一の形の発生を避けることはできない。ちなみに,これらと同じ語源をもつドイツ語の形はSohn[zoːn]とSonne[zɔnə]で,同音語にはなっていない。leadと表記される形は,[liːd]〈導く〉という動詞と[led]〈鉛〉という名詞を兼ねている。この場合には,表記が一つになった同綴り異義語である。これも古英語ではlœ˜danとlēadという別個の表記をもった形であった。bearは同じ[bɛə]で動詞〈運ぶ〉と名詞〈熊〉をあらわしている。これも古英語ではberanとberaのように区別されていた。日本語でも同音語は多いが,それにもかかわらず,漢字による表記の違いによってその意識が薄められている。〈説く〉と〈解く〉,〈書く〉と〈搔く〉などは,発音とかな(仮名)表記ならばbearと同類だが,書けばsonとsunの関係に類似している。〈恋〉と〈鯉〉と〈故意〉,〈家事〉と〈火事〉なども同様である。これらの同音語が伝達に支障をきたすことは文脈の違いによって避けられるが,〈市立〉と〈私立〉のようにやむをえない場合には,一方の発音(読み方)を変えて差別を明確にするよりない。
執筆者:風間 喜代三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
同音異義語ともいう。文字を考慮に入れると、さらに同音同字(同綴(つづり))語(「船長」が「キャプテン」と「船の長さ」を意味し、英語のcaseが「場合」と「箱」を意味する場合)と同音異字(異綴)語が区別される。歴史的にみると、語源が異なる場合(「かわ」が「川・皮」、「くも」が「雲・蜘蛛」をさす場合)と、語源は同じであったものが、意味分化が進んだ結果、異義語となった場合(「から」→「空・殻」)がある。同音語の混同は、文脈などの助けで避けられるのが普通であるが、文脈も同じ場合がある(「市立・私立」「化学・科学」)。ときには、意味がほとんど反対になることもある(「鮮紅・浅紅」「偏在・遍在」「純洋式・準洋式」)。類義である場合もある(「気候・季候」「機械・器械」「辞典・事典」「定石・定跡」「生長・成長」)。類音語も話しことばでは誤解の元となりうる(「病院・美容院」「小牛・格子」)。
[国広哲弥]
…その数は時代とともに増したらしいが,ことに漢音系の漢語が飛躍的にふえたのは,明治初年以来とみえる。それは使用者の文化的優位を示すために,また簡潔で安定した語形での命名を得るために,かつ教育の普及に伴って重用されたが,一方では,日本字音の特性から同音語を多く作り,文字を見なければ通じない場合を生じさせ,ひいて漢字の学習を多くの人に過大に強制することになった。今日,漢字制限がまず実施されて,表記上漢字を用いない漢語がしばしば目に触れるようになり,新聞社などでは,文字の面から同音の他の漢字への書換えや言換えに積極的で,しだいに一般に平易化に向かっている。…
※「同音語」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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