ツパイ(その他表記)tupaia
tree-shrew

デジタル大辞泉 「ツパイ」の意味・読み・例文・類語

ツパイ(〈マレー〉tupai)

リスの意》ツパイ目ツパイ科の哺乳類総称霊長目または食虫目に分類されることもある。体の大きさ・形や動作などがリスに似て、昆虫果実などを食べる。東南アジア分布し、オオツパイハネオツパイコモンツパイなど20種近くが知られる。りすもどき。

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精選版 日本国語大辞典 「ツパイ」の意味・読み・例文・類語

ツパイ

  1. 〘 名詞 〙 ( [マライ語] tupai ) ツパイ科の哺乳類の総称。五属一六種が知られる。体長二〇センチメートル内外。形はリスに似て口吻が突き出ている。体毛は暗褐色インド・東南アジアに分布。樹上で昆虫や果実を食べる。分類上、最下等のサルとして霊長目に入れられたが、現在は食虫目とする説と独立のツパイ目とする説があり、食虫目と霊長目とをつなぐ動物とされる。りすもどき。

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改訂新版 世界大百科事典 「ツパイ」の意味・わかりやすい解説

ツパイ
tupaia
tree-shrew

ツパイはマレー語でリスという意味であるが,その名が示すように,リスに似た半地上・半樹上性の小型哺乳類。キネズミともいう。1872年にT.H.ハクスリー霊長類との類似性を指摘し,92年にカールソンが初めて霊長類の仲間として分類して以来,その系統上の位置については多くの説が提唱され,まだ統一をみるに至っていない。モグラジネズミなどと同じ食虫類に含めるとする説,もっとも原始的な霊長類(霊長目原猿亜目の1下目)であるとする説,独立したツパイ目を設けるべきだとする説などがある。歯の数や形態,母指対向性,視覚の発達と嗅覚(きゆうかく)の退化は霊長類と食虫類の中間的段階にあり,また眼球を取り囲む骨の形態はきわめて霊長類的な特徴を示す。いずれにせよ,霊長類と食虫類の中間的形態をもつツパイの存在は,霊長類が樹上生活に適応した食虫類様の小型哺乳類から進化したという,今日の一般的な考え方の重要な根拠の一つとなっている。

 ツパイの仲間には5属17種が含まれる。おもなものとしては,コモンツパイTupaia glis,グミーツパイDendrogale murina,フィリピンツパイUrogale everetti,エリオットツパイAnathana ellioti,ハネオツパイPtilocercus lowiiなどがある。頭胴長14~21cm,尾長13~20cm,体重120~190g。フィリピン,インドネシアから,中国南部以南の大陸部,インドにかけて生息する。ハネオツパイが夜行性であるほかは,主として早朝や夕方に活動する。昆虫などの小動物のほか,柔らかい果実も食べる。同性の個体に対して排他的ななわばりをもつ単独生活者であると考えられているが,雄のなわばりは1頭以上の雌のなわばりと大幅に重複していることが多く,空間的にはペア型ないしハレム型のまとまりが見られる。また,イチジクの実がたくさん実ったときなどには,多数のツパイがなわばりを越えて集まることもあって,社会生活の全体像に関してはまだ不明な点が多い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ツパイ」の意味・わかりやすい解説

ツパイ
つぱい
treeshrew
tupaia

哺乳(ほにゅう)綱ツパイ目ツパイ科に属する動物の総称。別名キネズミまたはリスモドキ。この科Tupaiidaeの仲間は、ツパイ亜科Tupaiinaeとハネオツパイ亜科Ptilocercinaeに二分される。前者は昼行性か薄明薄暮性で、ツパイ属Tupaia、マドラスツパイ属Anathana、フィリピンツパイ属Urogale、ピグミーツパイ属Dendrogaleの4属を含み、後者はハネオツパイ属Ptilocercus1属のみで夜行性である。外見はネズミやリスに似た小動物で、古くは食虫目とみなされ、20世紀に入り霊長目に分類されるようになったが、1960年代後半以降、ツパイの系統上の位置の再検討が試みられた結果、食虫目に戻される傾向が強まった。その後、独立のツパイ目として扱われるようになった。いずれにしても、ツパイが食虫類と霊長類の中間的特徴を示していることは重要である。

 インドから中国南部、東南アジアにかけて生息し、科としての分布は北緯28度~南緯9度、東経72度~127度の範囲を覆う。鼻口部は長く突出し、四肢の指はすべて鉤(かぎ)づめをもつ。大きさは種ごとに異なるが、体重は50~250グラム、頭胴長10~24センチメートル、尾もほぼ同長で11~22センチメートルあり、多くの種ではふさふさしている。体毛は灰色ないし茶褐色で、暗色や赤みを帯びたり、黒い斑点(はんてん)や明るい縞(しま)模様をもつものもある。歯式は

で38本。上顎(じょうがく)大臼歯(だいきゅうし)の形態は食虫類的である。一方、眼窩(がんか)周囲の骨が発達し、前肢第1指が他の指から分離し、嗅覚(きゅうかく)器官が退化傾向をみせ、視覚がよく発達しているなどの特徴は霊長類的である。雑食性の半地上・半樹上生活者で敏捷(びんしょう)に動き、果実、昆虫、小形爬虫(はちゅう)類などを食べる。社会構造は不明の種が多いが、コモンツパイのように、同性間は対立的で、異性間では重複するような行動域を各個体がもち、単独行動・ペア型(ないしハレム型)繁殖システムが基本的と推定される。妊娠期間は41~50日で、1産1~3子、普通は2子を産む。

[上原重男]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ツパイ」の意味・わかりやすい解説

ツパイ
Tupaiidae; tree shrew

霊長目ツパイ科の動物の総称。ツパイ属 Tupaia,エリオットツパイ属 Anathana,フィリピンツパイ属 Urogale,ピグミーツパイ属 Dendrogaleなどから成る。体長 20cm,尾長 15~20cm。尾には長いふさふさした毛が生えており,一見リスを思わせるので,リスモドキともいう。食虫類に分類されることもあるが,現在は最も原始的な霊長類とされる説が多い。口はやや突き出し,リスのような頬ひげはない。前後肢には鉤爪があり,鼻口部には毛がない鼻鏡がある。昆虫類を主食とするが,果実,木の芽なども食べる。昼行性で低木林にすみ,鳥のような声を出す。東南アジアに分布する。

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百科事典マイペディア 「ツパイ」の意味・わかりやすい解説

ツパイ

ツパイ目ツパイ科の哺乳(ほにゅう)類の総称。古くは食虫目に含められたり,霊長目にされたりした。サル類はこのツパイに近い小動物から進化したと考えられている。体長,尾ともに20cmほど。毛は赤褐色で,灰,茶,黒などが混じる。インド,東南アジア〜フィリピンに分布。昼行性で,多くは熱帯多雨林の低木の茂みにすみ,主として昆虫,また果実,種子,葉なども食べる。1腹1〜3子。
→関連項目サル(猿)

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