食虫類(読み)ショクチュウルイ(英語表記)insectivore

翻訳|insectivore

デジタル大辞泉 「食虫類」の意味・読み・例文・類語

しょくちゅう‐るい【食虫類】

食虫目哺乳類の総称。モグラトガリネズミハリネズミなどで、虫を主食とする。哺乳類の原始的な形態をとどめている一群で、オーストラリアと南アメリカ中・南部とを除く全世界に分布。

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精選版 日本国語大辞典 「食虫類」の意味・読み・例文・類語

しょくちゅう‐るい【食虫類】

  1. 〘 名詞 〙しょくちゅうもく(食虫目)〔生物学語彙(1884)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「食虫類」の意味・わかりやすい解説

食虫類 (しょくちゅうるい)
insectivore

真獣下綱食虫目Insectivoraに属する哺乳類の総称。単孔目と有袋目以外の哺乳類,すなわち一子宮類あるいは有胎盤類といわれる真獣類のうち,もっとも原始的と見られる哺乳類の一群で,ジネズミモグラハリネズミなどを含む。体は小さく,四肢が短く,前・後足にかぎづめを備えた5指をもち,足裏をつけて歩く蹠行(しよこう)性。吻端(ふんたん)部は細長く,口よりも前に突出して可動性。目は小さく,足の甲や尾にはふつううろこがある。体毛はふつう短く,上毛と下毛の別がないが,ときにはとげを生ずる。歯は44本あることが多く,乳歯は早く抜け落ち,ほとんど役に立たない。歯にはすべて根があり,切歯は内側のものが外側のものより大きい。上の臼歯(きゆうし)には3~4個の,下の臼歯には5個の鋭い突起があり,食物を切り砕くのに適し,すりつぶすのには適さない。頭骨は低く平らで,眼窩(がんか)は後ろが開き,頰弓(きようきゆう)は発達が悪い。鼓骨は輪状で聴胞を形成しない。大脳半球は小さく,表面が平滑で溝がなく,小脳を覆わない。精巣はふつう腹腔内か鼠蹊(そけい)に位置し,陰囊を欠く。子宮は双角性。盲腸がなく,しばしば排出腔がある。胎盤は円板状。

 オーストラリア区,南極大陸,南アメリカの中部と南部を除きほとんど世界中に分布し,熱帯から寒帯,低地から高山までの森林,草原,砂漠など種々の環境にすむ。地上または地下生,まれに水生。昆虫,ミミズなどの無脊椎動物を主食とするが,ネズミなどを食べるものもある。おもに夜行性で単独生活をし,ソレノドンブラリナトガリネズミなどは,獲物にかみついて顎下腺(がつかせん)から分泌される毒液を注入し,弱らせてとらえる。またトガリネズミは超音波を発し進路を探る。

 かつては,ツパイなどを含むこの目から他のすべての真獣類が分かれ出たと考えられていたが,近年は白亜紀のデルタテリデュウム,ザランブダレステスや現生のツパイ,ハネジネズミなどはこの目のものでなく,貧歯目,有鱗目,齧歯(げつし)目,ウサギ目などとこの目は直接の系統的な関係がないとの説が有力になってきた。しかし皮翼目,翼手目,ツパイ目,霊長目,有蹄類,食肉目などはこの目から分かれ出たものらしい。現在もっとも妥当と思われる分類は,ツパイハネジネズミを各独立の目とし,食虫目に次の6科,約360種を含めるものである。ソレノドン科(ソレノドン2種。西インド諸島),テンレック科(テンレック,ポタモガーレなど32種。マダガスカルアフリカ中西部),キンモグラ科(キンモグラ17種。アフリカ),ハリネズミ科(ジムヌラ,ハリネズミなど19種。ユーラシア,アフリカ),トガリネズミ科(トガリネズミ,ジネズミ,ジャコウネズミカワネズミなど258種。ユーラシア,アフリカ,北アメリカ,南アメリカ北部),モグラ科(デスマン,ヒミズ,モグラなど32種。ユーラシア,北アメリカ)。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「食虫類」の意味・わかりやすい解説

食虫類
しょくちゅうるい
insectivores

哺乳(ほにゅう)綱食虫目に属する動物の総称。この目Insectivoraの仲間は、単孔類、有袋類以外の哺乳類(真獣類)のうちでもっとも原始的とみられる食虫性の小獣類である。一般に体は小さく、なかにはコビトジネズミやトウキョウトガリネズミなど頭胴長4センチメートルほどの最小の哺乳類を含む。四肢は短小かつ蹠行(しょこう)性で、腹を地面につけるか、ほとんどつけるようにして歩く。指は普通5本で鉤(かぎ)づめを備え、吻(ふん)の前部は長く、口よりも前に突出していて可動性。目は小さく視力が弱く、耳殻が普通小さく、足の甲や尾には鱗(うろこ)がある。歯は普通44本(真獣類の基本型)、臼歯(きゅうし)には3~5個の鋭い突起があって、食物を切り砕くことはできるが、すりつぶすには適していない。大脳は小さく表面が平滑で、知能が低い。陰嚢(いんのう)がなく、しばしば総排出腔(こう)があり、胎盤は円盤状をしている。

 オーストラリア区、南極大陸、南アメリカの中部以南を除き、ほとんど世界中に分布し、熱帯から寒帯、低地から高山までのあらゆる環境にすむ。樹上生のものはなく、地上または地下生、まれに淡水生。普通単独で生活し、昼夜とも活動して、昆虫、ミミズなどの無脊椎(むせきつい)動物を主食とする。ソレノドン、ブラリナトガリネズミなどは、獲物にかみついて顎下腺(がっかせん)から分泌する毒液を注入し、弱らせてとらえる。またトガリネズミは超音波を発して進路を探り、ハリネズミなどは冬眠する。

 かつては、この類から他のすべての真獣類が分かれ出たと考えられていたが、近年では、この類から出たことが確かなのは皮翼目、翼手目、霊長目ぐらいしかなく、間接に関係があるのは有蹄(ゆうてい)目、食肉目などで、貧歯目、有鱗(ゆうりん)目、齧歯(げっし)目、ウサギ目などはこの類の子孫ではないと考えられるようになった。現生のものは、西インド諸島のソレノドン科(ソレノドン2種)、マダガスカル島とアフリカのテンレク科(テンレク、ポタモガーレなど33種)、アフリカのキンモグラ科(キンモグラ17種)、ユーラシアとアフリカのハリネズミ科(ジムヌラ、ハリネズミ17種)、アフリカ、ユーラシア、北アメリカ、南アメリカ北部のトガリネズミ科(トガリネズミ、ジネズミ、ジャコウネズミ、カワネズミなど約246種)、ユーラシアと北アメリカのモグラ科(モグラ、ヒミズ、デスマンなど約29種)、およびアフリカのハネジネズミ科(ハネジネズミ15種)の7科約360種がある。最後のハネジネズミ科は盲腸をもち、目がよく発達し、なかば指行性でカンガルーのように後肢で跳躍するほか、かかとの関節なども他の食虫類と違うので、近年ではウサギ目に近い独立の目とされることがある。

[今泉吉典]

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百科事典マイペディア 「食虫類」の意味・わかりやすい解説

食虫類【しょくちゅうるい】

哺乳(ほにゅう)類の一目。5指に鉤爪(かぎづめ)をもち,蹠行(せきこう)性または半蹠行性,虫食性を特徴とし,真獣下綱の中で最も原始的。南米,オーストラリア以外の全世界に分布。ソレノドン科,テンレック科,ポタモガーレ科,キンモグラ科,ハリネズミ科,ハネジネズミ科,トガリネズミ科,モグラ科の6科約360種がある。なお古くはヒヨケザル,ツパイなどもこれに含めたが,現在では前者は皮翼目,後者はツパイ目に分類される。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「食虫類」の意味・わかりやすい解説

食虫類
しょくちゅうるい
Insectivora

哺乳綱食虫目に属する動物の総称。体制は最も原始的である。大脳は小さくて皺も少い。前肢には5本の指があり,鉤爪をもつ。多くは眼や耳が小さいか,または退化している。オーストラリア,南極を除き世界各地に分布し,地上,地下または水中で生活している。現生のものはハリネズミ,モグラ,テンレック,キンモグラ,ソレノドン,トガリネズミの6科に分けられ,360種あまりが知られている。

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