改訂新版 世界大百科事典 「ツルナ」の意味・わかりやすい解説
ツルナ
New Zealand spinach
Tetragonia tetragonioides(Pall.) Kuntz.(=T.expansa Murr.)
暖地の海岸に見られるツルナ科の一年草。熱帯域では多年草的になる。分枝し匍匐(ほふく)する茎はやや多肉で,長さ1mに達することもあり,地面をおおうように生育する。互生する葉も肉質で,三角状卵形から広卵形あるいはひし形状で,長さ3~10cmほど,両面ともざらつく。花は1~3個が葉腋(ようえき)に生じ,黄緑色で花梗はごく短い。3~5裂した萼片を頂端部につけるが,花弁はない。子房は半下位で,3~5室。果実は2~数個の種子をいれ,この果実ごと海流などで分散する。南アメリカ,オーストラリアから東アジア温暖域まで広く海岸に分布する。新芽や葉をつんで野菜とし,ホウレンソウのように食用にする。夏季高温時によく茂り,芽をつむと腋芽が次々に伸び出すので,引きつづき収穫することができる。日本,中国,インドやマレーシア地域ではそのために栽培もされたが,煮ても少しざらつく感じが残るので,ホウレンソウほどは利用が広がらなかった。窒素やカリ肥料を多用するとよく生育する。
執筆者:堀田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報