日本大百科全書(ニッポニカ) 「テリア」の意味・わかりやすい解説
テリア
てりあ
terrier
哺乳(ほにゅう)綱食肉目イヌ科の動物。家畜イヌの1グループで、テリアといえば容姿の美しい家庭犬を想像するが、元来はキツネ、アナグマ、ノネズミその他の小獣類を狩るために作出された犬種群である。系統的にはディンゴ‐パリア犬の系列に属するとみなされている。テリアの名は、大地を意味するラテン語テラterraに由来しており、地面の下に潜り込んで獲物をとるところから名づけられた。人間が定住し農業が発達するにつれて、被害を及ぼすノネズミの駆除が真剣に考えられ、ヨーロッパケナガイタチなどと組んでノネズミ狩りに用いられるイヌが重宝されたり、スポーツとしての狩猟の発展により、執拗(しつよう)に穴の中にまで獲物を追う犬種が求められたりした。テリアはこれらの目的に合致するように作出されてきた犬種群で、日本でも31犬種が公認されている。体形、毛質はさまざまであるが、テリア・キャラクターといわれる独特の性格がある。すなわち、明朗活発な気質をもち、動作は敏捷(びんしょう)、不屈の激しい攻撃心を抱いている。このため、テリア類は獲物に対し飽くことなき攻撃性を示し、獲物がそこにいる限り攻撃の手を緩めない。また、この性格は闘犬においても遺憾なく発揮されるので、闘犬種にテリアの血を引くものが多い。このほか、テリアの活動性に富む性格は、多くの作業犬の成立に影響を与えてきただけでなく、テリアのなかでも大形のものは、大形獣の猟犬、警察犬、軍用犬として活躍している。
種類が多いテリアのなかで、ビッグスリーといわれるのは、エアデールテリア、ワイヤーヘアードフォックステリア、スコッチテリアの3犬種で、世界的に多くの愛好者をもち、日本でも普及している。また、多種類のテリアも、外観からは長脚テリアと短脚テリアに2大別される。長脚テリア群には、エアデールテリア、フォックステリア、ベドリントンテリア、ケリーブルーテリア、ウェルシュテリア、アイリッシュテリアなどがある。一方の短脚テリア群には、スコッチテリア、ダンディディンモントテリア、ウェストハイランドホワイトテリア、シーリハムテリア、ケアンテリアなどがある。テリアの原産国としては、ドイツ、オーストラリアなどもあるが、イギリスが圧倒的に多い。イギリスは他の家畜においてもさまざまな品種を作出しているが、イヌにおいても新種の改良固定と保存に熱意をもっていることがわかる。テリアには、短毛種もあるが、ワイヤ状の硬い被毛をもつものが多い。また、トリミングを要するものや、断耳をする品種も多い。
以上のほか、テリアの名がつくがテリアグループには入れられず、愛玩(あいがん)犬、もしくは非猟犬グループに区分されるものに、ボストンテリア、ヨークシャーテリア、トイマンチェスターテリア、シルキーテリアなどがある。また、日本原産のテリアとしては、短毛のフォックステリアをもとに作出固定された日本テリアがある。
[増井光子]