犬を闘わせる競技。賭博の対象となることが多い。古代ローマですでに行われ,前3世紀ころのギリシアの壁画に犬と猫を闘わせている賭博が描かれている。インドの初期仏教典に闘犬を戒める字句がみられ,12世紀のアンコール・トムの庶民生活を描いた浮彫のなかに闘犬の賭博がある。インドや東南アジア諸国では現在でも闘犬が行われているので,この地方の伝統的な賭博の一種といえる。犬の攻撃性を利用して17世紀から18世紀にかけてイギリスで闘犬とともに,犬と熊を闘わせる賭博のベアベーティングbearbaitingや犬と雄牛を闘わせる賭博のブルベーティングbullbaitingが流行した。現在,闘犬は,ヨーロッパやアメリカではまれにしか行われていないが,スタッフォード・テリア,ブルドッグ,ヤンキー・テリア,土佐犬などが闘犬として用いられている。
日本では闘犬は犬合(いぬあわせ),犬食(いぬくい)と呼ばれて古くから行われ,12~13世紀ころの作とされる京都高山寺の《鳥獣戯画》に闘犬が描かれている。14世紀の《太平記》《増鏡》《北条九代記》に北条高時らの武将が闘犬を愛好し,月に12度も催し1回に200匹もの犬を闘わせたと記されている。江戸時代は闘犬の記録が少ないが,幕末から明治初期に闘犬を禁じたりしていることから,わずかながら行われていたとみられる。明治末期より大正初期にかけて東京を中心に闘犬がにわかに流行し,犬種改良の名のもとに闘犬を主催するクラブが数団体つくられた。当時は日曜日ごとに数千の観衆を集めて行われたが,賭博取締りにより短期間で鎮静した。闘犬は大型日本犬の秋田犬や土佐犬,外国種ではブルドッグ,ブルテリアが用いられる。現在,日本では賭博の対象としては禁止されているが,競技として高知県,青森県で行われている。闘犬は直径約5mの囲いの中で闘い,鳴声をあげたり逃げるなど闘志を失うと負けと判定され,強さによって横綱,大関などの格付けがされている。
執筆者:増川 宏一
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イヌを戦わせて勝負を争う競技。古くは「犬合せ(いぬあわせ)」または「犬くい」という。鎌倉時代に武士の間で盛んに行われ、北条高時がとくに愛好したことが『増鏡(ますかがみ)』『太平記』に記されている。明治時代に現在の闘犬の諸規則が確立し、大正の初めにかけて全国的に流行した。また東京を中心として会員制の闘犬クラブが多くでき、大掛りな闘犬がしばしば開催されたが、1916年(大正5)東京市は動物愛護の立場から闘犬を禁止している。
闘犬に使用するイヌは土佐犬がおもで、ついで秋田犬が使用されるが、東京地方ではブルドッグやブルテリヤなど外国犬が使用されたこともある。競技は、高さ3尺5寸(106センチメートル)の木柵(もくさく)で囲われた15尺(455センチメートル)四方の土俵で行われ、相手に尻(しり)を向けて逃げるか、うずくまるなど戦意を失ったと判定されたほうを負けとする。現在は賭(か)け事としてはもちろん、動物愛護の立場からも禁じられているが、高知、秋田県下では、地方的な行事として公然と行われている。また土佐犬の場合は、土佐犬普及会が指導して全国的に闘犬が行われ、毎年大相撲のように横綱から前頭まで順位を定め公表している。闘犬は日本ばかりでなく、外国でもマスチフ、セントバーナード、ブルドッグなどのイヌを使用し地方的に行っている所がある。
[倉茂貞助]
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…(B)愛玩犬 チワワ,チン,ペキニーズ,マルチーズ,ポメラニアン,プードル(イラスト),ダルメシアン(イラスト),ブルドッグ,チャウ・チャウなど。 以上のほか特殊な用途に応じて,警察犬(ジャーマンシェパード,ブラッドハウンドなど),軍用犬(ドーベルマン・ピンシェルなど),救助犬(セント・バーナードなど),闘犬(土佐闘犬など),盲導犬(ラブラドル・レトリーバーなど)と呼ぶこともある。
【習性と行動】
飼われたイヌは飼主に服従し,命令に服するだけでなく進んで外敵を攻撃して飼主を守るが,これは飼主を自分が属する群れの上位者と見ているためである。…
※「闘犬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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